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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-201

異なる解析対象範囲を用いた野生動物の分布拡大要因の推定

*奥村忠誠(東大・院・農学生命科学),清水庸(東大・院・農学生命科学),大政謙次(東大・院・農学生命科学)


近年、全国で野生動物の分布拡大が確認され、それに伴い農林業被害地域も拡大し、大きな社会問題となっている。そのことから、分布拡大に影響する要因を把握することは被害拡大防止の一助になると考え、さらに、分布拡大の要因が個体群を安定的に維持できる生息地からの距離に影響されることを仮定した。そこで、本研究では異なる解析対象範囲を用いて解析することで分布拡大の要因把握を試みた。

調査対象種はニホンジカ、イノシシ、ニホンザル、ツキノワグマ、ニホンカモシカの5種とした。これらの種の分布データは環境省の自然環境保全基礎調査の第2回(1978年)と第6回(2003年)を用い、両時期に分布していたメッシュを安定メッシュ、第6回のみに分布していたメッシュを拡大メッシュと定義し、解析は拡大メッシュを対象に行った。説明変数には、標高、積雪、植生、土地利用、人口、道路に関する変数を用いた。解析では誤差分布を二項分布、リンク関数をロジットとした一般化線形モデルを用いた。解析対象範囲は本州、四国、九州とし、全域を対象にした解析では安定メッシュからの距離を説明変数に含むモデルと含まないモデルの二つのモデルを作成した。また、25年間の分布拡大距離の統計量をもとに3つの解析対象範囲を設定しモデルを作成した。

全域モデルでは、多くの種で人口や標高や積雪などの比較的広域で変動する要因が強く影響していた。解析対象範囲を絞ったモデルでは、各種の生態に基づいた要因が選ばれていたが、耕作放棄地や植生、道路などの比較的小スケールで変化する要因が影響を及ぼしていることがわかった。また、多くのスケールで、これまでの研究では指摘されてこなかった人為的要因の影響が示唆された。これらのことから、分布拡大の制御には、土地利用や環境整備が重要であると考えられた。


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