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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-220

治山ダムによって土砂送流が抑制された渓流の植生分布 〜AKAYAプロジェクト治山ダム撤去対象地・茂倉沢の事例〜

*林雄太, 吉川正人(東京農工大・院・農), 藤田卓(日本自然保護協会)


生物多様性の復元と持続的な地域社会づくりを目指して、群馬県みなかみ町の赤谷川流域で進められているAKAYAプロジェクトの一環として、2009年10月に赤谷川支流の茂倉沢における治山ダムの部分撤去が実施された。本研究では、ダム撤去が渓流生態系にもたらす効果をモニタリングしていくための基礎的情報として、撤去前の渓畔地形および渓畔植生の分布とダムの有無との関係を明らかにすることを目的とした。

赤谷川との合流地点から上流約3kmにわたって、ダム非設置区間と7基の治山ダムが設置されているダム設置区間を対象に、渓流沿いの地形区分をおこない、その分布図を作成した。また相観的にまとまりのある植分で植生調査を行い、群落区分を行った。

その結果、植物群落は24群落(高木6、低木6、草本12)に分類された。ダム設置区間では、非設置区間に比べて面積が大きく、流路からの比高が小さい砂礫堆が広がっており、出現する植物群落にも違いがみられた。ダム非設置区間では、岩壁にイワタバコ-フクロシダ群落、流水辺の岩隙にナルコスゲ群落、段丘面にサワグルミ群落(アサノハカエデ下位単位)などが特徴的に出現した。一方、ダム設置区間では、ダムの満砂によって上流側に形成された砂礫堆にアカソ-キオン群落、クマイチゴ群落やサワグルミ群落(ケヤマハンノキ下位単位)、伏流水の流水辺にツリフネソウ-ミゾソバ群落(ミゾホオズキ下位単位)などが特徴的に出現した。ダム設置区間では、堆砂によって谷が埋積したことにより伏流区間が増えて、増水時に水没する渓流帯が消失したこと、谷幅が広がって日射量が増加したことなどが、ダム非設置区間との植物群落の違いに影響していると考えられた。


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