ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-225
畑憲治(首都大院・理工・生命)・宗芳光(小笠原亜熱帯農セ)・加藤英寿(首都大院・理工・生命)・可知直毅(首都大院・理工・生命)
小笠原諸島に侵入している外来木本種トクサバモクマオウ(以下モクマオウ)は、優占した林分において大量のリターを林床に供給する。予備的な研究により、モクマオウが侵入した林分とそうでない林分におけるリターの分解速度が異なる可能性が伺われた。この違いは、その場所で供給されるリターの質の違いとその場所の環境条件の違いによって説明されることが考えられる。この予測を検証するために、小笠原諸島父島において、モクマオウが優占する林分(以下モクマオウ林)と在来種が優占する林分(以下在来林)において、リターの質の違いを考慮してリターの分解速度を比較した。2007年8月に、モクマオウ林と在来林に設置された各30箇所の調査区において、それぞれ15箇所ずつモクマオウのリターと在来木本種にリターを入れたリターバッグを設置した。設置したリターバッグは、2008年8月と2009年8月に回収し、乾燥重量を測定した。同一の林分間で比較すると、モクマオウのリターの残存量は、在来種のリターのそれよりも小さかった。一方で、同一のリターの間で比較すると、モクマオウ林に設置したリターの方が、在来林に設置したリターよりも残存量が大きかった。結果的に、野外条件を想定した場合(モクマオウ林におけるモクマオウのリターと在来林における在来種のリター)、リターバッグ中のリターの残存量に違いは見られなかった。これらの結果は、モクマオウのリターの分解には、モクマオウのリターの質と侵入した環境という複数の要因が関与していることを示唆する。