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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-235

淡水性カメ類の被食被害:房総半島における発生事例

*小賀野大一(市原高校),小林頼太(東大・農),小菅康弘(カメネットワーク), 篠原栄里子(千葉県自然保護課),長谷川雅美(東邦大・理)


在来の淡水性カメ類は、河川改修や水田・溜池の放棄などの生息環境の悪化に加え、外来カメ類の侵入による競合も懸念され、全国各地で生息数の減少が明らかになってきている。我々は、在来カメ類の減少要因として、これまで重要視されてこなかった「被食」について,経年的なモニタリング調査と広域パターン調査により、甚大かつ緊急性の高い状況を確認したので報告する。

房総半島にはニホンイシガメをはじめ淡水性カメ類がまとまって生息しており、関東地方では貴重な地域といえる。我々は1990年代より半島中部を流れる特定の小河川でカメ類の個体群調査を実施してきた。上流域の捕獲個体数は2005年までは10〜40個体程度あったが、その後減少し、2008年は1個体とほぼ絶滅状態となった。前年の2007年は7生体と1死体を確認し、死体は四肢が食いちぎられ、生体も3個体が四肢、尾が欠損していた。また、同一河川の下流域でも2008年に、在来カメ類の大量死体が発見された。死体数は105個体で、捕獲した生体の30%以上の個体に頭部、四肢、尾に外傷や欠損がみられた。これらの現状を踏まえ、2009年に同一河川の流呈分布調査と内房地域の河川を中心に広域の被害調査を実施した。流程分布調査では、捕獲数は1998年の168個体が10個体になり捕獲地点も激減した。また、広域調査では、75調査地点のうち21地点でカメ類が確認され、四肢欠損個体は広範囲の11地点から確認された。

房総半島で突然カメ類に生じた被害原因は、欠損状況から哺乳類による捕食であり、考えられる有力候補として、近年急速に分布を拡大した特定外来生物アライグマの可能性があがった。大きな環境改変がない調査地で在来哺乳類は考えにくく、アライグマの生息確認とカメ類の深刻な被害時期は一致した。


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