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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-247

琵琶湖・淀川水系における腹口吸虫の拡大予測と魚病阻止に関する研究

*馬場孝,浦部美佐子(滋賀県立大・院・環境科学)


2000年以降、天ヶ瀬ダムより下流の宇治川で、外来寄生虫(ナマズ腹口吸虫Parabucephalopsis parasiluri)による魚病が発生している。2007年以降、ダムより上流の瀬田川および琵琶湖南湖で、本種が相次いで発見された。琵琶湖には固有の魚類や水産上重要な魚類が生息しているため、本種の影響を評価することが急務である。そこで魚病原である本種のセルカリア幼生に着目し、琵琶湖南湖および宇治川の水中における密度を推定し、魚病を引き起こす密度と比較した。

カワムツ属の幼魚をセルカリアに暴露すると、セルカリア密度が66×104虫体/m3以上の時に、出血などの魚病症状が見られた。第一中間宿主カワヒバリガイの生息密度、生息面積、感染率、1日セルカリア遊出量、セルカリアの生存期間、流量または水塊体積を用いて水中セルカリア密度を求めた。その結果、宇治川では763虫体/m3、琵琶湖南湖では0.05虫体/m3と推定された。実際にセルカリアを採集すると、宇治川で225-625虫体/m3、琵琶湖南湖では、5虫体/m3未満であり大差はなかった。これらの値は実験によって推定された魚病発症密度を大幅に下回っていたため、現状では、魚病が発生する可能性は低いと推測された。宇治川における魚病発症条件を推定すると、カワヒバリガイ密度が2009年の3倍の834個体/m2、感染率が2008年水準の12%、天ヶ瀬ダムの放流量が10m3/sの時、セルカリア密度が10×104虫体/m3に達することがわかった。また、琵琶湖南湖においては、カワヒバリガイ密度が2009年の宇治川と同レベル(278個体/m2)、感染率が12%に達したとしても、セルカリア密度は魚病発生時の約1/1700であり、魚病が発生する可能性は低いと考えられた。


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