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ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-255

南極観測事業における外来生物持ち込みの特徴とその危険性

*辻本惠(総研大・極域),伊村智,神田啓史(極地研)


外来生物がある地域の生態系にもたらす影響は、今世紀の生態学者が直面している最も重要な課題のひとつである。とくに南極においては、生態系の構成が極めて単純で脆弱であること、またその特異な生態系が長い歴史上他の生態系から孤立して存在していたことから、外来生物が陸上生態系に破壊的な影響を与える可能性は否定できない。すでに南極半島や亜南極の島々においては、近年の年間訪問者数の急激な増加に伴う数々の外来生物が報告されており、今後、昭和基地を含む高緯度地域においても拡大すると予想される外来生物の移入に関して、早急な対策が必要であると考えられている。そこで、本研究では外来生物の「移入プロセス」に着目し、南極観測活動における外来生物持ち込みの実態を明らかにするため、南極観測事業に纏わる移入物資の付着物調査を行った。

調査は2007年10月から2008年1月までの期間に、第49次日本南極地域観測隊の1.輸送物資、2.人員(装備品)、3.生鮮食品を対象として行い、各対象物の付着物を採取し含まれる繁殖体(種子、昆虫、コケ、菌類など)の種類・総数を調べた。1.国立極地研究所倉庫内にて行った輸送物資の調査では、数個の種子やクモなどが検出された。一方、2.砕氷船「しらせ」船上において隊員53名を対象として行った装備品調査では、比較的大型である種子や昆虫などは検出されず、数枚のコケの葉とダニがみつかったのみであった。このような結果は、装備品の特徴を調べたアンケート調査から、日本の南極観測システムの新品支給制度から導かれている可能性が高いことが示唆された。また、3.生鮮食品調査では、昭和基地に到着した食品中20種類を調査したところ、5割以上の食品にカビが付着していることがわかり、今後このような菌類の持ち込みによる影響を調べる必要性が示唆された。


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