ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-288
*保原 達(酪農大),太田明日香(山形大),大園享司(京大生態研)
ケイ素は、とくにイネ科の植物において、植物組織硬化のもととなる元素であるとともに、植物の生長を増大させる元素としても知られてきている。ケイ素の植物にとっての可給性は、土壌の風化や土壌への炭素蓄積とともに低くなってゆくため、植生遷移の系列では初期ほど高く、後期になるにつれ低くなってゆくものと考えられる。そのため、植生遷移の初期では、ケイ素を利用して競争を生き抜く植物が多くなり、後期では逆にケイ素以外を利用して競争を生き抜く植物が多くなることが予想される。本研究では、この仮説を検証するため、遷移系列に沿って様々な植物を採取し、そのケイ酸態ケイ素濃度を測るとともに、土壌環境なども調査した。その結果、遷移初期の植物は、比較的ケイ素濃度の高いものが見受けられ、遷移後期の植物はケイ素濃度の低いものが多かった。また、土壌中のケイ素の可給性の高い場所では、ケイ素濃度の高い種が見られるほか、同種内でも植物体中のケイ素濃度も高くなる傾向にあり、土壌のケイ素環境の変化にしたがい植物のケイ素濃度やケイ素を利用する植物種の出現に影響があることが示唆された。これらのことから、植生遷移の初期では、土壌のケイ素環境と連関しケイ素を多く利用する植物が多くなり、後期では逆にケイ素以外を利用して優占する植物が多くなることが示唆された。