ESJ57 一般講演(ポスター発表) P3-289
*大浦典子(農環研),岸本(莫)文紅(農環研),木村園子ドロテア(農工大・ 農),米村正一郎(農環研)
森林土壌における温室効果ガスフラックスは、植生や地形によって異なる物質循環や物理環境の影響を受けると予想される。そこで、複雑な地形を有する東京農工大FM多摩丘陵を対象地とし、土壌からの温室効果ガスフラックスの空間変動調査を2時期にわたって行った(詳細は木村らを参照)。本報告では、フラックスの変動と地形や樹種などの環境要因との関係について解析する。
FM多摩丘陵内の調査プロット(100m×100m、10mグリッド)で、ガスフラックス測定時に、土壌水分(TDR)および地温の測定を行った。また、土壌およびチャンバー内のA0層(冬季のみ)を採取した。各グリットを標高、傾斜方向、傾斜角度および植生をもとに5つの地形区分の分類し(尾根、落葉広葉樹北斜面、針葉樹北斜面、南斜面および谷部)、地形の特性を考慮した。
CO2フラックスは、プロット全体でA0層(>8mm)炭素量と正の相関を示した(r=0.35、p<0.01:以下同様につき省略)。特に、尾根部の夏季および落葉広葉樹北斜面の冬季では相関が高く(r=0.59、0.68)、分解基質の供給量がCO2フラックスに影響していた。CH4フラックスは、A0層(>8mm)炭素量と負の相関(r=-0.47)を、土壌水分(TDR)と正の相関(r=0.75:夏、0.57:冬)を示した。ただし、土壌水分が低い尾根部では相関は認められなかった。N2Oフラックスについては、ホットスポット的に高い放出を示す場所が存在した。夏季データは、土壌水分(r=0.42)および表層土壌の硝酸イオン濃度(r=0.52)と正の相関が認められた。一方冬季には、湿潤な場所に加え、土壌水分の低い尾根部でもN2Oの高い放出箇所が捉えられた。これは、谷部や傾斜部とは異なる発生過程(条件)によると考えられる。