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ESJ57 企画集会 T25-1

気候モデルで用いられる植生モデルの概要、トレンド、問題点

佐藤永(名古屋大・環境学)


気候変化が生じても、その新しい気候に適応した植物生態系が生じるまでには数百年から数年年スケールにおける時間遅れがあると考えられている。なぜならば、植生が変化するまでには、新しい気候環境に適応した植物が侵入し、それが既存植生と競争を行いながら、徐々に優占度を高めていくといった、一連の過程が必要だからである。動的全球植生モデル(DGVM)では、このタイムラグの長さを決める植物個体群動態過程(定着・光や水を巡る競争・死亡・攪乱)を扱うための、個体群動態モジュールが結合されている。近年のDGVMでは、木々の個体間相互作用も陽に扱われており、より詳細な生態学的知見をモデルに反映させる試みが進められている。しかしながら現状においては未だ、種子拡散速度や、気候変動に対しての木本の死亡率変化など、植生変動を予測する上で極めて重要と思われる要素が、無視されていたり、ごく簡単な仮定がおかれている。本講演では、気候モデルで用いられている植生モデルの諸状況を俯瞰し、その中で信頼性をもっとも損なっていると考えられる要素を取り上げる。そして、そのような状況が生じた理由を考察し、その改善のために何が必要であるのか、研究の方向性に関して提案を行いたい。


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