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ESJ58 シンポジウム S16-4

地域戦略の策定状況と自治体が抱える課題

*山本清隆,豊野基(東京市町村自治調査会),阿部剛志(MURC)


生物多様性地域戦略(以下、「戦略」)は既に10数自治体で策定され、今後も一定の増加が見込まれるが、生物多様性の保全と持続可能な利用を地域レベルで普及・定着させるためには、生物資源や市民・企業活動と密接にかかわる基礎自治体で戦略に基づく施策・事業の実行を主流化することが求められる。

しかし、2010年10月に首都圏、関西圏で実施したアンケ-ト調査では「当面の策定予定はない」とする自治体が大半を占め、その傾向は基礎自治体で顕著であった。

基礎自治体での戦略策定意向が低い要因として、生態系の保全施策・事業は多くの自治体で最上位計画である総合計画や、環境分野の分野別計画において既に体系的に位置づけられており、首長等による強い政策的判断がない場合は短期的な費用対効果を見出しにくい施策を新たに推進することは困難であること、また、管轄区域を超える生態系の保全施策を展開する際の周辺市町村との調整基盤がないことや広域自治体である都道府県の戦略との役割分担が曖昧である点などがあげられる。

こうした状況を踏まえると、基礎自治体における戦略策定の主流化に向けたアプロ-チとしては、生態系の保全という「環境戦略」に加え、全ての基礎自治体において重要な政策課題である地域生活・域内経済の持続性(活性化)と生態系サ-ビスの持続可能な利用との関係性を見つめなおし、その関係性をまちづくりや産業施策と結びつける地域固有の「経済戦略」の側面を戦略へ明確に位置づけることが有効である。

この検討プロセスでは生態学の科学的・専門的見地を駆使しつつ、既存政策体系を踏まえた効果的な施策の位置づけ方や、施策実施による地域経済への効果・影響の評価などを併せて行うことが重要であり、基礎自治体の戦略策定現場では、地域政策の総合的な視点を有した生態学者の協力が求められている。


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