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ESJ58 企画集会 T10-1

趣旨説明?博物館に舞い込む生物多様性保全の相談ごと?

井上雅仁(島根県立三瓶自然館)


博物館や研究機関の生態学研究者が,生物多様性や自然環境の保全に関して相談を受ける機会は,年々増す傾向にある.例えば著者が2010年に関わった事例として,レッドデ-タブックの改訂,世界遺産石見銀山での自然環境保全や森林整備,ジオパ-ク登録を目指す隠岐地域での生態系保全,西中国山地における希少植物の分布と保全,三瓶山での草原性希少種の保全活動などがある.相談元は県や市町村といった行政,自然保護に関わる市民団体など,内容は生物種の分布把握,調査や保全手法から政策や法整備の相談,実際の保全活動への協力や効果検証のモニタリングなど,多岐にわたっている.

このようなシンクタンク的な側面は,当館に限らず,多くの機関が直面している事項である.その背景には,社会的な環境保全意識が高まり,法整備や施策が進められてきたことで,市民,行政ともに保全に携わる機会が増えてきたことがある.反面,実際の対策や検証においては,専門的知見が不足していることへの不安があるため,地域の博物館や研究機関への相談が増えているのが現状であろう.

最近では,このような社会情勢を反映して,シンクタンク機能を重要な役割と位置づける博物館も少なくない.地域の生物多様性保全という社会要請への対応は,博物館や研究機関の新たな社会的地位を確立していく上で,大切な転機になると考えられる.一方で,多くの機関では,人的・金銭的に厳しい中で各種の活動を行っているのが実情であり,十分な対応が難しいとの声もしばしば聞かれる.

本集会では,博物館や生物多様性センタ-などでシンクタンク事業に関わっている生態学研究者から,各機関での取り組みや成果,直面した課題などについて報告してもらい,これからの姿について議論したい.


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