野外調査の安全マニュアル案

(日本生態学会 野外安全管理委員会 編)

未定稿につき、画像、リンク等について未設定のものがあります。
また、未完の記事が含まれています。

ご意見等は anzen[at]mail.esj.ne.jp までメールでお寄せください ([at]を@に変えてください)。


総論

基本的心得

 安全に野外調査を行うために、もっとも重要なことは、あきらめることである。データが十分とれないともちろん困るのだが、データはとれたものの死んでしまっては元も子もない。データがとれずに留年するのと、認定で学位はとれたものの死んでしまうのと、どちらが良いかと聞かれたら、本人・友人・指導教員・そして学生の親・兄弟の全員が、留年しても生きて帰るのが良いと言うはずである。生きて帰ることが何よりも大事である。

  指導に当たる立場の人間は、データよりも命が大切であることを、明確な言葉として学生に確実に伝える義務がある。学生は、データを採取することに、教員が想像する以上のプレッシャーを感じている。このプレッシャーが、学生に過度の無理を強いることになる。「データよりも命が大事」であることは、学生にとって必ずしも自明ではない。教員は、学生を送り出す際に、「注意深く行動せよ」と言ってはならない。「臆病すぎるほど臆病になれ」「危険を感じたら、データをあきらめろ」と言い続けるべきである。学生を殺してはいけない。また、学生はフィールドで死んではいけない。生きていさえすれば、研究はできる。死んだら研究もできないし、学位も役には立たない。

 指導教員や先輩は、自らの危険な経験・無理・無茶を、武勇伝にするべきではない。冒してしまった危険な経験や無理は、論文の盗用と同じぐらい恥ずべき経験であると思うべきである。そのような恥を忍んで、同じ過ちを後輩が冒すことがないようにという気持ちで、自らの経験を語るべきである。無謀な野外調査の思い出話や冒険談は、調査前の計画や準備の能力不足を吐露しているだけであり、自らの能力の低さの証明に他ならないことを、年長者は年少者を前にして自覚すべきである。


Last modified: Thu, 27 Mar 2008 08:56:39 +0900 (JST)