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会長からのメッセージ −その13−

「学会賞のこと 再び」

第1回のメッセージに常任委員会の報告として大島賞の新設について報告しましたから、今回のメッセージは同じことの繰り返しになって、少々煩くてすみません。

このほど学会賞の改正案について全国委員会のメンバーに、メールで了承をいただきました。ただし、会則を変更することになりますので、正式の決定は来年3月、54回大会での総会を通過する必要があります。総会で反対が多いとせっかくの大島賞が宙に浮いてしまいますので、今回のメッセージは、総会をうまく通りますようにという、会員の皆様方への説明を兼ねております。

生態学会の賞は「宮地賞」が若手を「生態学会賞」が指導的立場の人を対象としておりましたから、その真ん中の「中堅」といった人たちがはずれているという感じがします。そこで会則改正案では、「(大島賞は)生態学の発展に寄与している本学会の中堅会員を主な対象とする」というふうになっています。「主な」ですから、すこしくらいはずれていてもよいという含みをもたせてあります。

また細則では「(大島賞は)、例えば野外における生態学的データの収集を長期間継続して行うなどにより生態学の発展に寄与している本学会の中堅会員を主な対象とする」とよりくわしく規定していますが、やはり「例えば」「等」「主な」などがあるように、はずれていてもよいという含みが残っています。しかし、一応、フィールドでこつこつと仕事をしてきた中堅の会員に光を当てたいという、私の会長公約に沿った形になっていると考え、ほっとしているところです(立候補したわけではないんだけどね)。

他の改正点をあげると、宮地賞の対象者は2名から3名ということになりました。(今度はあなたにも当たるかもしれない、応募したまえ)。また、ポスター賞が「全国大会賞」と名前を変えました。名前だけでなく、今までは各大会が表彰していたものが、学会が正式に表彰する、つまり学会賞の一つとなったわけです。

これで、ポスター賞が研究を始めたばかりの若手、宮地賞が業績の出ている若手、大島賞が中堅、生態学会賞が指導的な研究者、功労賞が過去の功績に対して、そして長老の先生方は名誉会員と各年齢層に対して表彰できる体制が整いました。また論文賞はEcological Researchに掲載された論文著者に対して数編を対象に与えられます。共著の場合は著者全員に与えられますから、受賞者の数は相当数に上ります。今や、日本生態学会が表彰面で他学会より立ち後れているということはないと思うのだが、皆様の感想はいかがでしょうか。

賞が増えると審査が大変なのですが、宮地賞、大島賞ともに、生態学会賞の審査委員が兼ねることになっています。委員の数は9名で任期は3年です。毎年3名ずつ入れ替えになります(6名2年から改正になった。)委員は全国委員の推薦できまります。委員は候補者の主な論文を読まなければなりませんから、なかなか大変です。生態学といえども最近は分野も広いので全ての論文を正当に評価できているのか。こういう疑問におそわれたとき、どうしても委員は「論文の掲載されている雑誌の名前に頼ってしまう」ことになります。権威に頼らず自分の見識に頼らねば、まともな審査委員とはいえない。と思うのだけれども。で、こういう場合は、「野外で、長期的に」などという指標があると、審査員もやりやすいだろうと考えている。 今回は前に書いたことの繰り返しのようで申し訳なかったのですが、事務的にステップが一歩進んだので報告とさせていただきました。また学会員以外の読者の方には(これが居られるらしいのだ)興味がなかったかもしれません。いっそこのさい会員になっていただけるとありがたいのですが。

▲(今回の挿し絵)8月に入ってから、石川県も暑い日が続きましたが、ある日ようやく大きな夕立がありました。それはすぐにあがり、雲の切れ目から白山が姿を顕わすのを大急ぎでスケッチしました。