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会長からのメッセージ −その1−

「新会長より」

 今年1月から2年間、日本生態学会会長をつとめることになりました。日本生態学会がより一層活発な学会となるよう、微力ながら努力したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 さて、私が日本生態学会の会長をつとめることになるとは、2年前まで夢にも思っていませんでした。2年間「次期会長」をつとめた今でも、果たして私が適任かどうか、自分では判断がつきません。

 思えば2年前、屋久島世界遺産センターに一緒に宿泊していたAさんに、「いま会長選挙をやっていますね。今度は矢原さんかもしれませんよ」と脅かされたのが、会長をつとめる可能性に気づかされた瞬間でした。その時まで、誰が会長候補に推薦されているかに、関心を払っていなかったのでした。5名の候補のリストを見ると、私以外は全員植物生態学を専門とされる方でした。私も植物学の出身ですが、九大に着任して以後、動物生態学の伝統も引き継ぎたいと考え、動物を材料として研究したいという学生も受け入れて、研究指導につとめてきました。その結果、ノネコ、イヌビワコバチ、ツチガエル、ミヤマホオジロなど、動物の繁殖生態学に関する論文も書いてきました。そのため、動物生態学分野の票が私に集まったのではないかと想像しています。

 また、私は鷲谷さんと「保全生態学入門」を書き、環境省植物レッドデータブックの編集に携わり、自然再生事業指針のとりまとめを担当するなど、保全生態学分野でも仕事をしてきました。そのため、保全生態学分野の方が私に投票される傾向があったのでしょう。

 さらに私は、「空飛ぶ教授のエコロジー日記」というブログを書いています。この情報発信による「知名度」が、私に票が集まる結果を招いたのかもしれません。Aさんには、「中静さんの方がより安定感があるが、矢原さんの方がブログも含めていろいろ露出度が高いので、今度は矢原さんでしょう」と言われたのを覚えています。その予測どおりの結果になってしまいました。幸い、昨年末の選挙で、安定感のある中静さんが次期会長に選出されたので、私としてはかなり安心をした次第です。

 結局、植物票が5人の候補に分散する一方で、動物票、保全票、ブログ票を集めた私が当選したというのが、前回の会長選挙に関する私の分析です。

 このような分析を書いたのは、選挙の結果を受けて、私が何をすべきか考えてみるためです。日本生態学会には、多種多様な生物を研究されている会員がいらっしゃいます。また、知的好奇心にもとづいていて基礎研究に邁進されている会員、生物多様性や生態系の保全のために献身的な努力をされている会員、数理モデルにもとづく理論的研究をされている会員、分子生物学的手法を積極的に取り入れられている会員、長期にわたる野外調査を続けられている会員、熱帯雨林をフィールドにされている会員、極地をフィールドにされている会員、里山をフィールドにされている会員など、さまざまな研究手法を用い、さまざまな研究フィールドを対象とされている会員がいらっしゃいます。職種の点でも、大学教員・独立行政法人の研究職・コンサル職員・博物館職員など、多様です。日本生態学会の運営にあたっては、何よりもまずこのような多様性に十分に配慮すべきでしょう。会長が学会の進むべき道についてビジョンを打ち出して、学会全体を牽引するというような、世にはやりの「トップダウン」というやり方は、日本生態学会にはふさわしくないと考えます。幸い、日本生態学会では、研究材料、研究手法、研究フィールド、職種など、どのカテゴリーで見ても、大小さまざまな分野で、研究・教育・保全・普及などの活動がアクティブに進められています。会長および執行部の重要な仕事は、これらの多様なアクティビティが自由に発展して いくための条件整備をすることでしょう。

 この点で、鷲谷元会長、菊沢前会長の下で4年間 にわたって準備が進められてきた「公益法人化」は、今期の最大の課題だと心得ています。まずは、第55回大会(福岡)において、公益社団法人の定款案を提案し、法人化後の事業計画について議論を始めます。

 もう一つの「条件整備」は、若手の職や、キャリアパスを増やすことだと考えています。最近の学位論文の水準は、私が大学院に在籍したころに比べれば、格段に高いものになっています。多くのすぐれた若手研究者が確実に育っていますが、残念ながらポスドクや、ポスドク後のポストは、十分ではありません。この問題の解決のために、日本生態学会は、もっと積極的に取り組むべきだと考えています。この課題について、日本生態学会の下に新たなワーキンググループを作って、取り組みを開始できないかと考えています。

 これらを含め、今期に取り組む課題については、新常任委員の方々とよく相談して、方針を決めていきたいと思います。常任委員会を構成する新メンバーは、以下のとおりです。

会長: 矢原 徹一
次期会長: 中静 透
幹事長: 小泉 博
次期幹事長: 粕谷 英一
常任委員: 齊藤 隆
常任委員: 日浦 勉
常任委員: 宮下 直
常任委員: 半場 祐子
常任委員: 西脇 亜也
常任委員: 池田 浩明
庶務幹事: 津田  智
会計幹事: 肥後 睦輝
法人化WG長: 石川 真一
ER編集委員長: 河田 雅圭
生態誌委員長: 堀 良通
保全誌委員長: 湯本 貴和
将来計画専門委員長: 可知 直毅
自然保護専門委員長: 立川 賢一

 今年第一回の常任委員会は、2月6日に開催されます。学会の運営についてご意見、ご要望があれば、どんなことでもご意見をお寄せください。常任委員会で議題にとりあげて、検討させていただきます。 これから2年間、どうぞよろしくお願いします。

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