日本生態学会

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会長からのメッセージ -その6-

「自然史研究振興賞」の新設

 我が国では在野の研究者を中心に、生物の分布や生活史についての記載研究が古くから行われ、膨大な情報が蓄積されてきました。今年4月から始まったNHKの朝の連続テレビドラマでもその一端を扱っています。私もそうした先人から感化をうけ、ナチュラリストの道を歩んできた一人です。いま、その財産ともいうべき情報を使い、生物多様性についての現状分析や駆動因の解明などの包括的な研究がなされています。気候変動、化学物質の蓄積、外来種の侵入、野生動物の増加など、自然環境の変貌が激しさを増すなか、今後ますますそうした情報が重要になります。現在、学術分野でも選択と集中が進み、学術的にインパクトのある先端研究に目が向きがちですが、地道な記載研究の充実がいまほど求められている時代はかつてなかったと思います。それにも関わらず、地域に根ざした調査研究を行う人たちが近年急減しており、担い手の育成が急務になっています。

 日本生態学会ではそうした背景をうけ、このたび「自然史研究振興賞」を新設しました。生物多様性の可視化の源泉となる生物の分布、生活史などに焦点を当てた地道な研究を奨励し、振興するための賞です。記載研究の少なからずは、大学や博物館の紀要、分類群単位の学術雑誌、地方の同好会誌や研究会誌などに掲載されており、そうした実績を讃えることが趣旨です。

 この賞は、株式会社シンクネーチャー社から生態学会へご寄付をいただき、それを原資に毎年2名程度に授賞することを予定しています。10年間という期限付きですが、生物多様性に関する情報は、企業や行政も含めた社会のニーズが高まっているため、それ以降も継続的に資金援助を受けられるような仕組みづくりも検討していきたいと考えております。

 賞の規則等については、学会ホームページにも記載されています。また応募用紙については他の賞と同様、6月より公開いたします。自薦他薦を含めて、関連する会員の皆様方の積極的なご応募をお待ちしています。

一般社団法人日本生態学会 自然史研究振興賞 規則

2023年4月7日  会長 宮下 直

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