2004 年 8 月 25 日 (水) - 29 日 (日)

第 51 回   日本生態学会大会 (JES51)

釧路市観光国際交流センター



シンポジウム&自由集会
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2006 年 10 月 08 日 16:53 更新
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[要旨集] 口頭発表: 個体群生態

8 月 26 日 (木)
  • O1-Y01: 駿河湾のエダミドリイシ群集におけるウニ類3種の生態分布 (舟越, 上野)
  • O1-Y02: 淡水産小型枝角類Bosminaが異なる2種の捕食者に対して見せる形態的応答とその生態学的意義 (坂本, 張, 花里)
  • O1-Y03: ()
  • O1-Y04: 希少タカ類ハチクマの春秋の渡りと環境利用 (樋口, 中村, 植松, 久野, 佐伯, 堀田, 時田, 森下, 守屋, 田村)
  • O1-Y05: 高知県物部川における標識放流ウナギの個体群過程 (立川, 中島, 松田)
  • O1-Y06: ギンザケ個体群にみられる雄生活史二型の動態 (小関, Fleming Ian)
  • O1-Y07: 魚類の左右二型に与える遺伝的浮動の影響についての数理的研究 (中嶋, 松田, 堀)
  • O1-Y08: 形質の進化と個体群動態の安定性に関する数理的研究 (山田)
  • O1-Y09: 侵入生物の分布拡大速度に及ぼす増殖と分散の確率効果 (木村)
  • O1-Y10: ジェネラリストは変動環境下で絶滅しにくいか? (吉田)
  • O1-Y11: 食物網の構造の理解に向けて (ロスベアグ, 雨宮, 伊藤)
  • O1-Y12: Modelling the effect of Wolbachia on genetic divergence andspeciation in their insect hosts (Telschow)
  • O1-Y20: ()
  • O1-Y21: コロニーベース格子モデルでの撹乱とアリの分散戦略の関係について (中丸, 別府, 辻)
  • O1-Y22: 格子モデルの新しい近似法 (江副, 高田)
  • O1-Y23: ヤノネカイガラムシ-寄生蜂系の個体群動態特性 (津田, 松本, 市岡, 石田)
  • O1-Y24: ()
  • O1-Y25: 都市環境におけるモンシロチョウとスジグロシロチョウの遺伝的多様性と集団構造 (高見, 小汐, 石井, 藤井, 日高, 清水)
  • O1-Y26: 拡散係数の確率変動を考慮したトウモロコシの花粉拡散距離の推定 (山村)
  • O1-Y27: (... moves to O2-Y09) (---)
  • O1-Y28: 同所的同属種2種の共存に、樹形の分化は重要だった (山田, ンガカン, 鈴木)
  • O1-Y29: 二年草オオハマボッス個体群における空間分布の年変動 (鈴木, 鈴木, 可知)
  • O1-Y30: 土壌養分の空間的不均質性と競争がアサガオ個体の成長・物質分配・根系の空間分布に及ぼす影響 (中村, 鈴木, 可知)
  • O1-Y31: ハンゲショウの葉の白化現象が光合成へ与える影響 (山内, 鞠子)
  • O1-Y32: ユキワリソウの土壌シードバンク動態と遺伝構造 (下野, 上野, 津村, 鷲谷)
  • O1-Y33: カタクリにおける長期個体群動態ー開花・結実パターンと若齢個体の休眠についてー (大河原, 木下)

09:30-09:45

O1-Y01: 駿河湾のエダミドリイシ群集におけるウニ類3種の生態分布

*舟越 善隆1, 上野 信平2
1(株)東海アクアノーツ, 2東海大学海洋学部

本研究で対象としたエダミドリイシ群集は1996年に起こった低水温を契機に変遷を続けている.この変遷に伴い群集内に様々な生物が移入してきた.なかでも大型で個体数が多いのはウニ類のガンガゼ,ラッパウニ,タコノマクラである.本研究ではこれら3種のウニ類のエダミドリイシ群集における生態分布について報告する.
エダミドリイシ群集内に10×10mの方形枠を49枠設置し,2002年4月から2003年3月に月1回,方形枠内(4,900m2)のガンガゼ,ラッパウニ,タコノマクラの個体数を計数した.また,方形枠ごとの個体数から群集内の分布集中度指数Iδを求め,生サンゴ域,サンゴ礫地,砂地の底質別に個体数密度(個体/m2)を求めた.これとは別に2003年12月に群集内のサンゴ礫地においてNos.1から3の各々2カ所で底質を採取し,篩分け法により粒度分析を行った.なお,これらの調査はSCUBA潜水により行った.
2002年4月から2003年3月のガンガゼは7,408から12,149個体,ラッパウニは1,058から2,674個体,タコノマクラは707から1,225個体であり,分布集中度指数Iδはそれぞれ1.45から3.40,1.68から2.29,1.65から2.85であった.また個体数密度が最も高かったのは,ガンガゼは生サンゴ域で5.01個体/m2,ラッパウニはサンゴ礫地で1.00個体/m2,タコノマクラはサンゴ礫地で0.35個体/m2,であった.底質の混成比率は,No.1で砂分と礫分がほぼ同比,No.2で砂分が約60%,No.3は逆に礫分が約60%となった.これらの結果から,ガンガゼは生サンゴ域を,ラッパウニとタコノマクラはサンゴ礫地を中心に分布するが,タコノマクラはより砂分の多い砂地化したサンゴ礫地に集中して分布することが明らかとなった.


09:45-10:00

O1-Y02: 淡水産小型枝角類Bosminaが異なる2種の捕食者に対して見せる形態的応答とその生態学的意義

*坂本 正樹1, 張 光玄1, 花里 孝幸1
1信州大学山地水環境教育研究センター

 湖沼生態系で主要な構成要因である動物プランクトン群集では、被食者の個体群動態が単に直接的な捕食によって制御されているだけではなく、捕食者との間での化学物質を介した種特異的な反応によっても影響されている。これは一般に他感物質(allelochemicals)を介した情報伝達として知られ、湖沼では被食者となる生物が捕食者から放出される何らかの化学物質(受容者側が利益を得るため、「カイロモン」と呼ばれる)を感じとり、自身の適応度を上げる反応を見せる例がほとんどである。その一つにカイロモン誘引性の形態変化があり、今日では9種のワムシ類と17種の枝角類でその現象が知られている。この現象について、枝角類では数種のDaphniaについて良く研究されており、形態の変化を誘導する刺激はフサカ幼虫やプランクトン食魚から放出されるカイロモンであることが知られている。また、その形態変化はDaphniaに対する捕食者の捕獲効率を下げたり、捕まった後の逃避確率を上げる効果があることが示されている。富栄養湖で優占する事の多い小型枝角類ゾウミジンコ属(Bosmina)でも無脊椎捕食者のカイアシ類(Cyclopoid copepoda)や捕食性ミジンコのノロ(Leptodora)から放出されたカイロモンの刺激で形態変化が誘導され、捕食に対して有効な効果をもつことが報告されている。
 本研究ではBosmina属の2種(B. longirostrisB. fatalis)が捕食者Mesocyclops (Cyclopoid copepoda)とLeptodoraのカイロモンに反応して見せる形態変化とそれぞれの捕食者から受ける捕食圧について調べる事により、形態変化の生態学的意義について考察する。さらに、長野県諏訪湖など、Bosmina2種が共存する湖では2種の優占時期が異なることが観察されているが、それを引き起こす要因としての捕食者の存在についても言及する。


10:00-10:15

O1-Y03:

(NA)


10:15-10:30

O1-Y04: 希少タカ類ハチクマの春秋の渡りと環境利用

*樋口 広芳1, 中村 浩志2, 植松 晃岳3, 久野 公啓3, 佐伯 元子3, 堀田 昌伸4, 時田 賢一5, 森下 英美子6, 守屋 恵美子1, 田村 正行7
1東京大学大学院農学生命科学研究科, 2信州大学教育学部, 3信州ワシタカ類渡り調査研究グループ, 4長野県環境保全研究所, 5我孫子市鳥の博物館, 6エコ・プロデュース, 7京都大学大学院工学研究科

 ハチクマはハチ類を捕食することに特殊化したタカ類である.我々は2003年秋と2004年春に,本種の渡りを衛星追跡し,渡り経路などを詳細に明らかにすることに成功した.本講演では,渡り経路や渡りの継時緯度様式などについて報告し,合わせてサシバの渡りと比較することによってハチクマの渡りの特徴を明らかにする.追跡の対象となったのは,長野県の安曇野(1個体)と白樺峠(2個体)で捕獲した3個体である.装着した送信機は米国North Star社製,重量は20g,太陽電池方式のものである.
 ハチクマは秋,長野から中国地方,九州北部を経て中国に入った.その後,中国大陸を南下してマレー半島を経由し,インドネシアやフィリピンまで到達した.春の北上では,はじめは秋の南下経路を逆にたどったが,途中から大きくずれて朝鮮半島北部に向かった.その後,朝鮮半島を南下して九州に入り,東進して長野の繁殖地に戻った.春のこの渡り経路は,これまでどの鳥でも知られていなかったものである.
 ハチクマの渡りは,同じく長距離移動性のサシバの渡りと比べると,移動距離が長い上に大きな迂回経路をたどる.また,サシバの渡りは秋と春で経路が大きくずれることはないが,ハチクマの渡りは経路が季節によって大きく変化する.2種のこの違いが何にもとづくのかは,今のところはっきりしない.しかし,おそらく食習性の違いが関係しているのではないかと思われる.春から夏にかけての繁殖期には,サシバは両生・爬虫類を主食にし,ハチクマはハチの幼虫,蛹,成虫などを好んで食べる.渡りの中継地や越冬地での食習性はよくわかっていないが,おそらく繁殖期と同様の食習性を維持しているのではないかと予想される.ハチクマが日本の南西諸島を中継地または越冬地としないのは,この地域にハチ類が多くないことと関係しているのかもしれない.今後,食物となる動物の分布が東アジア全体でどのようになっているのか,またそれと両種の渡り経路がどのように関連しているのかを調べていく必要がある.


10:30-10:45

O1-Y05: 高知県物部川における標識放流ウナギの個体群過程

*立川 賢一1, 中島 敏男2, 松田 裕之3
1東京大学海洋研究所, 2高知県水産試験場, 3横浜国立大学大学院環境情報研究院

[目的] ウナギ資源は減少傾向にある。放流した標識ウナギの生残、成長や分布などの個体群過程を明らかにすることを通じてウナギ資源の回復方策を検討したい。
[方法] 養殖された当歳ウナギ(体長34cm、体重29.5g)の右胸鰭を切除して、高知県物部川河口から上流約3km地点で2000年5月19日に、7977尾放流した。河口から堰まで約7kmの流域において、木製トラップを6カ所に設置し、再捕を試みた。石倉漁業などの漁獲情報も活用した。調査は2000年5月から2003年12月まで実施された。
[結果] 標識ウナギの年間再捕尾数は、00年以降、94、46、19、21で、再捕尾数の総漁獲尾数に対する割合(%)は、8.5、7.5、2.6、2.6であった。瞬間減少率は、おおよそ0.5であった。放流地点より上流での年間総ウナギ漁獲割合は、00年以降、57.2から70.2%で、上流域でより多く漁獲された。標識ウナギでは、31.6から52.4%で、下流域に多く分布する傾向にあった。ウナギの全長範囲は、3年間で、28.9_-_40.5cmから36.4-51.3cm変化し、平均で8.4cm伸張した。肥満度指数の変動幅は大きいが、年々増加傾向にあった。自然順化と解釈できる体色の黄化割合は、00年以降、45.7から90.0%にまで年々増加した。雌の割合は00年以降、5.3から95.0%まで年々増加した。
[討論] 放流ウナギは少なくとも4年間定着し、生残することが確認された。放流後、成長が進み、肥満度が高くなり、体色が黄化することから、生活場所の確保や天然餌資源の利用ができることなど生活が自然順化していくと思われる。当歳ウナギ(クロコ)の放流によりウナギ資源への添加が期待されるが、生残率や成長率を高めるためには、ウナギの住める水域環境を回復させなくてはならない。


10:45-11:00

O1-Y06: ギンザケ個体群にみられる雄生活史二型の動態

*小関 右介1, Fleming Ian A.2
1北海道大学北方生物圏フィールド科学センター, 2オレゴン州立大学コースタルオレゴン海洋実験所及び水産野生動物学部

サケの個体群サイズ,あるいは資源量の時間的・空間的動態は,おもに水産学的重要性の点からこれまでにかなりの研究が行われ,資源量変動の制御機構(例えば,北太平洋数十年変動など)に関して多くの知見が蓄積されてきた。しかし,例えば成熟齢の構成,あるいは代替生活史型の比率といった生活史変異の動態はあまり注目されてこなかった。そこで本研究は,ギンザケの雄生活史二型(2歳のジャックと3歳のカギバナ)について,それぞれの回帰個体数,およびその比率の動態を特徴づけることを目的として,アメリカオレゴン州の孵化場から得られた標識放流_-_回収事業データの時間・空間分析を行った。9個体群(孵化場),1976-1997繁殖年にわたる放流グループごとの生活史二型の回帰個体数および比率データを,一般化線型モデルを用いて放流個体数,放流日,魚体サイズに対して調整した後(デビアンス残差),年次データにまとめた。このデータから観察された年次変動のパタン,およびその長期トレンド(三次関数で表現)とトレンド除去後の短期的変動パタン(関数からの残差)それぞれについて,孵化場間の平均相互相関係数(および信頼区間)の推定と空間構造の検定(マンテル検定)を行った。その結果,生活史二型の回帰個体数の年次変動はどちらも孵化場間で同調し,その原因はおもに長期トレンドであることが示された。さらに,ジャックについてはトレンド除去後の短期的変動にも孵化場間での同調が認められ,この同調は地理的な距離が近づくほど強くなるという空間構造をもつことが明らかとなった。これらの結果から,雄生活史二型の動態には広域的な長期トレンドと地域的な(ジャックの)変動をもたらす2つ以上の要因が関与していると考えられる。本研究では認められなかったものの,これらの要因は二型比率の動態にも影響を及ぼすかもしれない。


11:00-11:15

O1-Y07: 魚類の左右二型に与える遺伝的浮動の影響についての数理的研究

*中嶋 美冬1, 松田 裕之2, 堀 道雄3
1東大・海洋研, 2横浜国大・環境情報, 3京大・理

 魚類において、顎が右に開き体が左に曲がる「左利き」と、その逆の「右利き」という遺伝形質の二型が知られている。遺伝形式は1遺伝子座2対立遺伝子に支配される左利き優性のメンデル遺伝と考えられている。この魚の左右性は、分断性非対称(Antisymmetry)の一例と考えられる。各種内の利き比率は数年周期で振動している。魚食魚では自分と反対の利きの餌個体を主に捕食することが明らかにされており、本研究ではこれを交差捕食(Cross Predation)と呼ぶ。このような捕食の非対称性が魚類の左利きと右利きの共存を維持する要因と考えられる。その理由は以下のような頻度依存淘汰により説明できる。餌種に左利きが多かったとき、それを捕食する種では右利きが有利となり多数派になるため、やがて餌種では左利きが減少して右利きが増え、捕食者ではかつて少数派であった左利きが有利となって後に多数派となるように、被食者と捕食者において多数派の利きの入れ替わりが繰り返されると予想される。
 本研究では、上記の頻度依存淘汰の仮説を捕食者(種x)と被食者2種(種yとz)におけるそれぞれの種内の右利き遺伝子頻度モデルを用いて検討した。また種内の利き比率の振動に対する遺伝的浮動の効果を検討するため、計算機実験を行なった。全個体群が共存する唯一の平衡点では、種内の右利き個体頻度が1/2となり、線形化後のヤコビ行列の固有方程式をみると平衡点は中立安定であった。計算機実験の結果、種内での利き個体頻度は周期的な振動を見せた。スペクトル解析によると、3種の振動の位相はずれていたが周期は同じであった。遺伝的浮動はこの振動の周期を短くし、振幅を増幅させた。捕食率と被食者の内的自然増加率の増加はこの効果を増加させた。また捕食者が自分と同じ利きの被食者を食べる並行捕食(Parallel Predation)が多くなると、非周期的な振動が見られた。


11:15-11:30

O1-Y08: 形質の進化と個体群動態の安定性に関する数理的研究

*山田 聡美1
1奈良女子大学 人間文化研究科 情報科学専攻

 一般的に、個体群動態が起る時間スケールは進化が起こる時間スケールよりも小く、そのため多くの理論研究ではこの時間スケールの違いを用いて解析的に取り扱いやすい形、即ち個体群動態の平衡状態を仮定した進化、といったモデル解析が行われてきました。
しかし近年、adaptive dynamics といった、形質の進化ダイナミクスを個体群動態と同等に記述する理論研究が普及しつつあります。
そこで本研究では、形質の進化が個体群の安定性に及ぼす影響に着目し、単純な1種系個体群動態に関して、1)決定論的モデル、及び、2)確率論的個体ベースモデルを構築し、両者の振る舞いを比較することで形質の進化と個体群動態の安定性の関係を、量的形質に焦点を当てて数理的に探る事を試みます。
量的形質は一般的に、複数の遺伝子座が関係していると言われています。それぞれ個々の遺伝子座の関与は小さく、小さな効果が積み重なって形質が量的に発現すると考えられています。量的な変異の遺伝は、環境要因などの他の要因に比べて効果の小さい遺伝因子に支配されているため、量的な変異が常にそうとは限りませんが、大抵は多数の遺伝子座上の遺伝子の違いに影響されます。この量的形質の進化について、量的な形質が有性的に遺伝する場合に着目して考えます。
決定論的モデルとしては、注目する量的形質の親から子への遺伝様式を考慮したRicker ロジスティック増殖を考え、内的自然増加率の積分差分方程式を用いてモデルを構築します。
確率論的個体群ベースモデルとしては、量的形質の性質をもとにして遺伝について、各個体が複数の遺伝子座を持ち、それぞれの遺伝子座は対立遺伝子を持つと仮定し個体の形質はこの遺伝子座によって決まる、という条件を基にモデルを構築し、解析を行います。そして、2つのモデルの比較を行い、形質進化の個体群動態の安定性への関与について解析を行っていきます。


11:30-11:45

O1-Y09: 侵入生物の分布拡大速度に及ぼす増殖と分散の確率効果

*木村 美紀1
1奈良女子大学 人間文化研究科 情報科学専攻

侵入生物は、分散と増殖を繰り返しながら分布域を拡大してきた。本研究では、そのような生物の分布域拡大過程を記述する確率論的モデルを構築し、このモデルから求められる伝播速度と、対応する決定論的モデルの伝播速度を比較する。
本研究では、決定論的モデルとして、Kot et al. (1997)が提唱した積分差分方程式を採用する.このモデルは、時間が離散的で世代が重ならず、増殖と分散のステージが相前後して起こる生物集団の分布拡大過程を記述するモデルである.この決定論モデルに対応する確率論的モデルとして、“増殖”は平均値が決定論的モデルの増殖率と等しい二項分布に従い、“分散距離”は決定論的モデルと同じ分散カーネルに従う確率変数で与えられる場合を取り上げた。
上記確率論的モデルを数値的に解いて、決定論的モデルの速度の解と比較すると、伝播速度が大きく減少することが判明した。確率論的モデルの速度の遅れの原因が、“増殖”の確率性によるものか“分散”の確率性によるものかを明らかにする為、“増殖”の確率性の程度をさまざまに変えて、伝播速度の変化を調べた。その結果、“増殖”の確率性の程度は速度にほとんど影響しなかった。従って、遅れの原因は“増殖”の確率性によるものではなく、“分散”の確率性によるものであるということが判明した。
更に、確率論的モデルにおいて個体間の相互作用が及ぶ範囲(相互作用レンジ)を様々に変えて伝播速度を調べた。特に有限の相互作用レンジを持つ確立論的モデルと無限に大きい相互作用レンジをもつ決定論的モデルの結果とを比較することにより、相互作用の空間レンジと確率効果の関係を議論する。


11:45-12:00

O1-Y10: ジェネラリストは変動環境下で絶滅しにくいか?

*吉田 勝彦1
1国立環境研・生物多様性

 環境変動が起こったときに、どのような生物が絶滅しやすいのか、を明らかにすることは、生物の保全を考える上で重要な課題の一つである。生物には様々な種類の餌を食べるジェネラリストと特定の餌しか食べないスペシャリストが知られているが、環境変動が起こったときにどちらが絶滅しやすいかについては諸説あり、現在結論は得られていない。その原因の一つはスペシャリストの方が一般に分布が狭いため、両者を同じ条件で比較できなかったことである。もし生物群集の進化のコンピュータシミュレーションを行い、その中で進化的に出現した様々な食性を持つ生物を共存させることができれば、同じ条件での比較が可能になる。そこで本研究では、仮想的な食物網に一次生産量の変動を起こすコンピュータシミュレーションを行った。この食物網は動物種と植物種で構成され、植物は外界からのエネルギー流入を受けて一次生産を行う。モデルの中では、外界からのエネルギー流入量を変動させることによって、一次生産量を変動させる。動物種はそれぞれの好みに従って捕食する餌を選が、好みの幅が広いほど、取り入れた生物量のうち自分の成長に使えるものの割合が低くなると仮定する。シミュレーションの結果、変動がない場合はスペシャリストの方が絶滅しにくかった。しかし、規模の小さな一次生産量の変動が起こると、食物網のベースになる植物種が打撃を受けて絶滅し、その結果少数の餌しか捕食していないスペシャリストが絶滅しやすくなった。この時、多くの種類を餌としているジェネラリストはほとんど影響を受けなかった。規模の大きな変動が起こる場合、一次生産量が極端に減少するイベントが時々発生するが、この時、極端なスペシャリストと極端なジェネラリストが生き残る可能性が高く、中間的な性質を持つ生物が絶滅しやすかった。本研究の結果は、環境変動の規模によって、保全すべき種の優先順位が変わる可能性があることを示唆している。


12:00-12:15

O1-Y11: 食物網の構造の理解に向けて

ロスベアグ アクセル1, * 雨宮 隆1, 伊藤 公紀1
1横浜国大

高い絶滅率が生物圏に及ばす影響を予測するには、植物網(すなわち生態系における複雑な栄養相互作用ネットワーク)を詳しく理解することが必要である。統計的解析によって、食物網の構造は、自然界や社会で見られる他の相互作用ネットワークとはかなり異なることが分ってきている。食物網の構造についての記述的モデルは発言されてはいるが、困果的な理解はまったく進んでいないと言ってよい。我々の新しい食物網進化のモデルでは、定常状態での性質を正確に再現できる。このモデルでは、ほとんどの捕食者は被食者よりも大きいという観測事実と、種分化の速度が体重とともに減るという仮定とを組み合わせている。その結果、進化的な食物網ダイナミクスに強い制限が加わることになるが、個体群動態についての仮定は不要である。このモデルから、生態系が自己組織化臨界状態にあるという証拠が植物網の構造からも得られることが分かる。


12:15-12:30

O1-Y12: Modelling the effect of Wolbachia on genetic divergence andspeciation in their insect hosts

*Arndt Telschow1
1Center for Ecology Research, Kyoto Univ

Wolbachia is a group of intracellular bacteria that is widespreadamong insects, isopods, mites, and nematodes. They are responsible forvarious manipulations of their host reproduction system, includingparthenogenesis, feminisation, male killing, and cytoplasmic incompatibility(CI). The most common of these manipulations is CI, an incompatibilitybetween sperm and egg that typically results in the death of the zygote. Itwas suggested that Wolbachia induced CI could promote speciation in thehost. We tested this idea using mathematical methods. We analysed a modelwith two parapatric host populations, each infected with a differentWolbachia strain that causes bidirectional CI. Our main findings are: (1) Astable coexistence of the two Wolbachia strains is possible even if there issubstantial migration between the populations. (2) Wolbachia induced CIcauses a reduction of the gene flow between the host populations. Further,we derived a simple formula describing this gene flow reduction. (3)Bidirectional CI selects for premating isolation and so reinforces geneticdivergence between host populations. In summary, our results show thatbidirectional CI can greatly enhance the genetical divergence betweenparapatric host populations. This supports the view that Wolbachia canpromote speciation in their hosts.


13:30-13:45

O1-Y20:

(NA)


13:45-14:00

O1-Y21: コロニーベース格子モデルでの撹乱とアリの分散戦略の関係について

*中丸 麻由子1, 別府 弥生2, 辻 和希3
1静岡大学工学部, 2九州大学理学部, 3琉球大学農学部

環境攪乱下では長距離分散戦略はリスク回避が可能となるため進化的に有利であると言われている。しかしアリの場合、攪乱が頻繁に起こる場所には分散型ではない多女王性の種(アシナガキアリ、ツヤオオズアリなどの放浪種)が生息し、逆に攪乱が頻繁でない環境に拡散タイプの単女王性の種(オニコツノアリ、アズマオオズアリなどの非放浪種)が生息している。これはどのような要因で生じるのであろうか。
長距離分散戦略(L戦略)と短距離分散戦略(S戦略)の空間を巡る競争を仮定した。空間構造として格子モデルを仮定し、環境撹乱は2つの確率(撹乱発生確率と撹乱の広がる確率)によって制御する。シミュレーションを主としたモデル解析を行った。
まず、個体ベース格子モデル解析したところ、撹乱の大きいほどL戦略が有利となり、リスク回避と一致する結果となった。
次に、アリのコロニーダイナミクスに着目し、アリの巣の大きさによってアリの分巣タイミングや巣の生存率が決まるとした(コロニーベース格子モデル)。分散の際、S戦略は一対一に分巣するが、L戦略では分散するコロニーサイズは非常に小さいとした。
結果は、死亡率が巣サイズに強く影響している時や中程度の攪乱の場合にS戦略が進化しやすくなり、放浪種の特徴を上手く説明している。また、分巣タイミングを早くしたり、巣の成長速度を遅くしたり、巣が込み合うことによる悪影響があまり無い時にもS戦略が有利となった。また、数理モデル解析によっても、撹乱下でコロニーダイナミクスが各戦略の有利性に影響する事も示したい。
以上により、このアリの行動の進化では空間構造や攪乱規模の影響だけではなく、コロニーサイズのダイナミクスも考慮に入れる事が重要であると言える。


14:00-14:15

O1-Y22: 格子モデルの新しい近似法

*江副 日出夫1, 高田 政子1
1大阪女子大学理学部環境理学科

 近年、個体群の空間構造の理論的モデルを構築するための手法として、格子モデルが幅広く使われるようになってきている。格子モデルとは、空間を格子状に分割し、それぞれの格子点に個体またはサブ個体群が分布しているとするモデルである。格子モデルの研究は計算機シミュレーションに頼った解析が多いが、空間構造を考慮しながら格子モデルの数学的解析を可能にするための近似法として、ペア近似がよく知られている。ペア近似は、個体によって占められている格子点の割合(全体密度)と、隣り合う2つの格子の状態の相関(局所密度)を用い、直接隣り合わない格子の状態の間の相関を無視する近似である。しかし、特に平衡全体密度が小さい場合に、シミュレーションの結果とのずれが目立つという欠点があった。
 そこで本研究では、ペア近似の局所密度の代りに、6方格子空間において互いに隣り合う3個の格子の組(クラスタ)の状態を用いる新しい近似法を開発した。空間上の各クラスタは、個体によって占められている格子の数が(0個)(1個)(2個)(3個)の4つのクラスタに分類される。クラスタの配置の空間的相関を無視することによって、それぞれのクラスタの頻度の時間変化に関する連立微分方程式を書くことができる。
 この近似から得られた平衡状態を、ペア近似の結果およびシミュレーションの結果と比較すると、新しい近似法がペア近似よりもよりシミュレーションに合っているという結果が得られた。また、近傍数8の正方格子(Moore近傍)についても、格子4個からなるクラスタを考えて同様の計算を行い、ペア近似よりもよい結果を得ることができた。


14:15-14:30

O1-Y23: ヤノネカイガラムシ-寄生蜂系の個体群動態特性

*津田 みどり1, 松本 崇2, 市岡 孝朗2, 石田 紀郎3
1九大院農, 2京大院人環, 3市民環境研

ヤノネカイガラムシは温州ミカンの大害虫だったが、1980年代に中国からの2種導入寄生蜂を日本各地で放飼後、ヤノネを低密度に抑制することに成功した。その後の個体数変化については最近になって研究成果が相次ぎ、成功の鍵が解明され始めたばかりである。
講演者らは、これまでの長期データの解析で、気象要因と生物要因はともにヤノネの個体数変化に影響するが、自他種との密度依存性のような生物要因の方が相対的に大きな影響を及ぼすことを確認した。これは、急速な地球環境変化などの外部撹乱に対する反応が、系そのものの持つ動態特性に強く依存することを示す。そこで本講演では、ヤノネカイガラムシ?寄生蜂系の動態特性を解明することを目的とした。16年間の個体群動態データにモデルを当てはめ、撹乱後の元の状態への戻り速度(resilience)に比例するリアプノフ指数を推定した。モデルはNicholson-Bailey型の式に寄主の密度依存性と寄生蜂のII型の機能的反応を導入したものである。


14:30-14:45

O1-Y24:

(NA)


14:45-15:00

O1-Y25: 都市環境におけるモンシロチョウとスジグロシロチョウの遺伝的多様性と集団構造

*高見 泰興1,6, 小汐 千春2, 石井 実3, 藤井 恒4, 日高 敏隆5, 清水 勇1
1京都大学生態学研究センター, 2鳴門教育大学理科教育講座, 3大阪府立大学農学生命科学研究科, 4京都精華大学, 5総合地球環境学研究所, 6京都大学理学研究科動物学教室

 都市は人間活動のもっとも盛んな地域であると同時に,自然環境が大きく破壊されている場所でもある.都市やその周辺では,開発により,野生生物の生息地が急速に分断され,孤立する.その結果,集団サイズは減少し,集団間の移動は困難になり,遺伝的多様性は低下する.よって,都市に生息する生物集団の遺伝的背景を知ることは,都市環境の保全を考えるうえで重要な示唆を与えると考えられる.
 都市環境に生息するモンシロチョウとスジグロシロチョウについて,2年間にわたり複数回のサンプリングを行い,AFLP法により,集団の遺伝的多様性,構造,時期的変動を調べた.結果,両種共において,都市集団では遺伝的多様性が低下し,また集団の遺伝的組成が時期的に変動していることが明らかになった.変動のパターンは,モンシロチョウで周期的,スジグロシロチョウで漸進的だった.成虫の移動パターンは,モンシロチョウが季節的移動,スジグロシロチョウがランダムな分散であることから,都市集団で見られた遺伝的組成の変動は,成虫の移動によってもたらされたと考えられた.
 本研究の結果は,1)モンシロチョウとスジグロシロチョウの都市集団では遺伝的多様性が低下しているが,周辺集団からの移動によって新たな個体と遺伝的変異が流入し,集団が維持されていること;2)都市環境の保全には,そこに住む生物の移動を妨げない工夫が必要であること,を示唆する.


15:00-15:15

O1-Y26: 拡散係数の確率変動を考慮したトウモロコシの花粉拡散距離の推定

*山村 光司1
1農業環境技術研究所

拡散方程式から導かれるブラウン運動モデルは生物拡散や経済変動を予測する上での基本となってきたものである。しかし,近年では,このブラウン運動モデルでは現実の生物拡散や経済変動をうまく表現することができないことが知られてきている。この問題を解決するために今までにいくつかの工夫がなされてきた。生物拡散の分野では(1)生物個体群が拡散係数の異なる二つの群の混合であると仮定する(2)生物の各個体の拡散時間が確率分布にしたがうと仮定する,などのアプローチが採用されてきた。しかし,これらの方法においてもその仮定の一般性や妥当性については問題を残したままである。
ブラウン運動モデルでは生物の移動方向がランダムであると仮定されている。しかし,移動の際の「一歩の大きさ」については常に一定であると暗黙に仮定されている。そういう意味では,ブラウン運動モデルは「完全にランダムな動き」を表現しているとはいえない。現実には,環境にはさまざまな「揺らぎ」がある。その揺らぎのために「一歩の大きさ」もランダムに変動するはずである。そこで,今回のモデルでは,「一歩の大きさ」が確率的に変動し,その確率分布が一般化ガンマ分布で近似的に表現できると仮定した。この場合の拡散方程式は通常の方法では解けないが,時間を相対化して「拡散係数で重みづけた時間」なる概念を導入すると明示的な解を得ることができる。この解は移動時間がガンマ分布に従う場合の拡散方程式の解と一致することが示された。近年の数理ファイナンスの分野では,レヴィ過程の一種として「VGモデル」などが半経験的に使用されてきているが,今回得られた解の一次元版はこのVGモデルと一致する。したがって,このモデルはVGモデルの使用に対する一つの根拠も与えている。
生物拡散は,近年ではナタネやトウモロコシなどの遺伝子組み換え作物の花粉拡散の観点から特に多く議論されている。そこで,過去に報告されてきたトウモロコシの花粉拡散データのいくつかにモデルを適用してみた。


15:15-15:30

O1-Y27: (... moves to O2-Y09)

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1---

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15:30-15:45

O1-Y28: 同所的同属種2種の共存に、樹形の分化は重要だった

*山田 俊弘1, ンガカン オカ2, 鈴木 英治3
1熊本県立大, 2ハサヌディン大, 3鹿児島大

An interspecific comparison of tree architectures and allometries between two sympatric congeneric species that form part of the continuous canopy of an Indonesian flood-plain forest, Pterospermum diversifolium Bl. and P. javanicum Jungh. (Sterculiaceae), led to the hypothesis that the species coexist at equilibrium by filling different regeneration niches. For example, P. diversifolium is favored over P. javanicum at high light levels, but the opposite is true at low light levels. To test this hypothesis, we compared the microsite preferences and growth rates of the species as a function of ambient light conditions. We found that P. diversifolium was more abundant in brighter microsites than in shaded microsites. Stem elongation by P. diversifolium was most rapid in bright microsites and was significantly more rapid than that of P. javanicum in these sites. Because these results fit the predictions of the coexistence hypothesis, this study provides rare direct evidence that architectural and allometric variations can support the coexistence of congeneric species at equilibrium by means of differentiation of regeneration niches.


15:45-16:00

O1-Y29: 二年草オオハマボッス個体群における空間分布の年変動

*鈴木 亮1, 鈴木 準一郎1, 可知 直毅1
1東京都立大学大学院理学研究科生物科学科

植物個体群の空間動態を理解するには、世代内の死亡の空間パターンだけでなく、世代更新の空間パターンも明らかにする必要がある。小笠原諸島の海岸沿いの岩場に生育する一回繁殖型二年草オオハマボッス,Lysimachia rubida (Primulaceae)を対象に、5世代にわたる空間分布の変化を追跡した。
オオハマボッスは小笠原諸島の海岸に面した大小さまざまな礫がモザイク状におおう裸地環境に生育する。礫環境の効果を個体の空間分布を決める主要因として仮定し、それ以外の生態学的要因の効果を検出するために礫環境と個体密度の関係を考慮した無作為化検定法を開発した。
礫環境と個体の空間配置をランダムにずらした無作為化検定の結果、観察された個体の空間分布は礫サイズの小さな環境により偏って分布している傾向が統計的に検出された。つぎに、礫環境と個体密度の関係を保ったまま個体をランダムに配置する無作為化検定を行った。その結果、礫環境と個体密度の関係によって予想される以上に、観察された個体の空間分布は集中していること、実生個体は前年の繁殖個体の周囲に集中していることが統計的に示された。このことは、種子散布が繁殖個体の周囲に制限されている可能性を示唆する。また、礫環境と個体密度の関係によって予想される以上に、世代の異なる繁殖個体は互いに近接して分布していることも統計的に示された。この結果は、個体が利用する生育パッチは世代間で重複していることを示唆する。さらに、個体の空間分布に一回繁殖型二年草の生活史と同調した周期性があるかを検定したが、周期性は検出されなかった。その原因として、繁殖期を一年遅らす、埋土種子となるなど生活史形質の個体間変異が存在したことが考えられた。本研究の結果から、生育地がパッチ状に分布する環境での空間動態を決める世代内世代間プロセスが示された。


16:00-16:15

O1-Y30: 土壌養分の空間的不均質性と競争がアサガオ個体の成長・物質分配・根系の空間分布に及ぼす影響

*中村 亮二1, 鈴木 準一郎1, 可知 直毅1
1東京都立大学大学院 理学研究科 生物科学専攻 植物生態学研究室

 土壌養分の空間的な分布が不均質な環境下と均質な環境下では、地上部と地下部の物質分配や根系の空間分布が異なる。これらの形態的反応によって、不均質な環境下での植物の資源獲得は均質な環境下よりも効率的になると考えられている。加えてこれらの形態的反応は光環境によっても影響を受ける。個体群において植物が経験する光環境は個体間競争の結果変化するので、競争下にある植物では土壌養分の空間的不均質性の影響は単独で生育する植物の場合と異なると予想される。本研究の目的は、土壌養分の空間的不均質性が種内競争下の植物に及ぼす影響を定量的に評価することである。そのためにアサガオ個体の成長・物質分配・根系の空間分布を実験条件間で比較した。
 実験条件は土壌養分と競争を2要因とし、合計8条件を設定した。直径20cmの鉢の中央に直径10cmの円を仮定し、その円の内側と外側で土壌養分の濃度比率を変化させた(土壌養分条件、内側:外側が10:0、7.5:2.5、5:5、0:10の濃度比となる4条件)。1鉢あたりの土壌養分は全ての条件で等量である。1本の支柱を鉢内の全てのアサガオ個体が利用する「競争あり」と個別に支柱を利用する「競争なし」を競争条件とした。
 発芽から7週間後の平均個体乾重量は、7.5:2.5、5:5、0:10、10:0の土壌養分条件の順に減少した。「競争なし」のほうが「競争あり」よりも大きい傾向がみられた。また競争条件によらず養分濃度の高い部分に多くの根系が分布する傾向が認められたが、同時に養分が全くない部分にも根系は分布していた。
 以上の結果から、個体間で競争があると、必ずしも不均質な環境下での成長が大きいとは限らないことが分かった。この結果は先行研究の結果とは一致しなかった。実験条件間での成長の違いには、土壌養分の空間的不均質性に応じた根系の空間分布が影響していると考えられた。


16:15-16:30

O1-Y31: ハンゲショウの葉の白化現象が光合成へ与える影響

*山内 綾香1, 鞠子 茂2
1筑波大学生命環境科学研究科, 2筑波大学生物科学系

 植物にとって、葉は光合成や蒸散を行う場として重要な器官の一つである。とくに、光合成生産は植物の生長や種子生産を規定し、個体の生存や個体群の維持に重要な働きを持つ。よって、植物がより効率よく光合成生産を行うためには、葉群の大きさや分布がとても重要になる。
 ハンゲショウ(Saururus chinesis Baill.)は、本州から沖縄にかけての湿地に生育する多年生草本である。大きなものでは草丈が150cmに達し、茎の上部に無花被花からなる穂状花序を付ける。6から8月の開花時期には、主茎頂付近の数枚の葉が白く変化するという特徴をもつことが知られている。このように、葉の白化現象は季節的・局所的に起こることから、何らかの生態学的意味を持っていると考えられるが、葉が白く変化(白化)することは、光合成能力の低下を引き起こす可能性がある。この点に注目し、本研究では、未白化葉と白化葉の光合成能力を比較した。さらに、葉の白化現象のフェノロジーを追い、群落構造を調べ光合成生産の推定を行った。
 その結果、白化現象が群落単位の光合成生産へ与える影響はごく小さいことが分かったが、白化葉は未白化葉に比べ、有意に最大光合成速度が低下していることが示された。また、白化現象の分布やフェノロジーが有性生殖と一致し、関連が深いことが観察された。これらの結果より、光合成能力の低下がどの様に個葉の構造や機能に関係しているかを含め、白化現象の生態的意味を考えていきたい。


16:30-16:45

O1-Y32: ユキワリソウの土壌シードバンク動態と遺伝構造

*下野 綾子1, 上野 真義2, 津村 義彦2, 鷲谷 いづみ1
1東京大学農学生命科学研究科, 2森林総合研究所

土壌シードバンクは個体群の維持・拡大にかかわる様々な役割を担っており,種の生活史特性の解明や個体群の存続性を評価する際にはそれに対する考慮が欠かせない.
本研究では,浅間山の標高2000m地点に生育するユキワリソウ個体群を対象に,土壌シードバンク動態の定量的把握および土壌シードバンク中の種子集団と地上の開花個体群の遺伝構造の比較を行った.調査は環境条件と個体群の空間構造に違いの見られる2つの局所個体群(湿地と草地)を対象に行った.
2002年4月(実生の発生前)に,2 m×5mのコドラートを設け開花個体の位置をマッピングした.このコドラートを0.5mの格子状に分割し,その中心40点から直径5cm・深さ5cmの土壌コアを採取し,実生発生法により土壌中の種子密度を算出した.同様の調査を2002年8月(実生の発生後で種子散布前)および2003年4月にも行った.2003年に得られた実生と2003年の開花個体については10個のマイクロサテライト座の遺伝子型を決定した.
湿地では発生実生数や死亡種子数が多く調査期間中の土壌種子密度の変動が大きかったのに対し(約1000-3000/m2)、草地では発生実生数,死亡種子数ともに少なく変動が小さい(約1000/m2)という違いが見られた.シードバンクと開花個体の遺伝的分化程度は低く(湿地:FST= 0.003,草地:FST = 0.028),空間自己相関分析ではシードバンクおよび開花個体とも近傍の個体間で有意な正の相関が見られた.一方,生育段階を考慮した空間自己相関分析では草地で同様の構造が見られたのに対し、湿地では近傍の個体間で有意な負の相関が見られた.これらの結果をふまえて,個体群における土壌シードバンクの役割_-_個体数の維持,時間的・空間的分散,遺伝的多様性の保持などについて考察する.


16:45-17:00

O1-Y33: カタクリにおける長期個体群動態ー開花・結実パターンと若齢個体の休眠についてー

*大河原 恭祐1, 木下 栄一郎1
1金沢大学大学院自然科学研究科

カタクリはユリ科カタクリ属に属する多年生草本である。本種は基本的に種子による繁殖のみを行い、個体が実生から開花の成長ステージに達するまで10年以上かかることが知られている。そのためその群落の変遷の速度は遅く、約15年で個体の入れ代わりが起こると考えられている。そのため若齢個体の成長パターンや開花個体の開花・結実パターンなどの生活史戦略にもこうした長期間の個体群動態に適応した戦略があることが予想される。演者らは本種の個体群動態と生活史戦略の詳細な解明を目的とし、1994年から2004年までコドラートセンサスによる個体追跡調査を継続して行った。北海道札幌市定山渓付近の針広混交林内にあるカタクリ群落に永久コドラート(1 m x 1 m)を12個設置し、コドラート内の各カタクリ個体の分布を記録、標識マークを施した。特に実生と若齢個体、開花個体について、その定着率と出芽率、開花・結実率を毎年追跡した。実生の発芽頻度には年間差が見られ1994年と2002年に明確な増加数のピークが現れた。この事は個体群への新規個体加入に周期性があることを示唆していた。それら幼若個体の定着率は低かったものの、2年以上生存できた個体ではその後の生存率は安定していた。しかし各個体の出芽頻度は不定期で、個体間で成長率にも差が見られた。さらに開花ステージに達した個体では2-3年連続して開花が見られ、その後2-3年は開葉のみの非開花ステージに戻る個体が高頻度で観察された。また個体群全体の開花パターンも明確ではないが同調する傾向が見られた。このような開花とそれに伴う結実パターンは個体群成長に大きく関連していると思われる。