| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A1-01

日本産リュウノヒゲモの遺伝的多様性について

*金子有子(琵琶湖環境科学研究セ),浜端悦治(滋賀県立大),川瀬大樹(京大生態研),神谷要(米子水鳥セ)

環境省の絶滅危惧種II類に指定されているリュウノヒゲモ(Stuckenia pectinata)について、日本国内、および、中国、韓国、モンゴル、カムチャッカの集団を対象として、葉緑体DNAのtrnLL領域(572bp)の塩基配列を解析した。解析の結果、各集団には主にType AとType B(1塩基の置換)の2種類のハプロタイプが検出された。Type Aは日本全国の集団と中国、モンゴル等を含めた11集団に及んで広く分布していた。一方、TypeBは日本の6集団に限定して見られた。これらはアメリカに分布するリュウノヒゲモと近い系統であった。モンゴル集団の中にはType Aの他にS. vaginata, S. filformisと同じクレードに含まれるType Gが検出された。また、Type A、Bとは異なるType C、D、E、Fの4タイプが北海道と青森県の集団から検出され、Potamogeton属のクレードに含まれた。これらのハプロタイプには、PCR操作に用いたDNAに他の植物が混入した可能性と、リュウノヒゲモと他の植物との間に生じた交雑関係を反映している可能性が考えられる。また、マイクロサテライトマーカー(pp24, pp 37, pp 39, pp 40, pp 32, pp 34, pp 42)を用いて解析した結果、これらの7遺伝子座で、良好なPCR増幅、多型が得られた。解析の結果、自然度の高い阿寒湖集団等ではクローン多様性の高いことが分かった。一方、用水路で人為的に復元された和歌山県集団が単一クローンであるなど、人為的管理下の集団でクローン多様性が低い傾向が示唆された。

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