| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A1-07

飛行船による海洋生物調査の検討

*立川賢一(横国大・研究情報),白木原國雄(東大・海洋研)

海獣類、鯨類、大型魚類や魚群等の分布や行動生態、および珊瑚礁、海草場や海藻場の分布や現況等を空中観察するために航空機等が利用されている。小型飛行機やヘリコプター等は迅速に観測できる空中プラットホームとして有効であるが、特定位置の連続観測、騒音・風圧や観測作業性等に問題があるとされる。これらの航空機と比較し、飛行船の主な利点は以下である;1)空中停止(ホバリング)、2)超低速度飛行、3)ほぼ垂直の上下移動、4)低騒音、5)低風圧、6)キャビン内自由行動による観測作業。これらの飛行船特有の構造的機能的特徴は、3次元的定点での海洋・大気観測、鉛直写真撮影による対象物の大きさの計測、鯨類の発見確率推定等、陸上のみならず海洋生物の生態調査のために実効的で作業性の良い空中プラットホームとして利用できると考えられる。

現在、日本で常時運航している飛行船は、(株)日本飛行船が所有する準硬式飛行船・ツェッペリンNTのみであり、その主な仕様は以下である;全長75m、全高17.5m、最大幅19.5m、搭載荷重1.9トン、最高飛行速度(時速)125km、最大航続時間24時間、航続可能距離900km、上昇高度限度2,600m、総乗員乗客数14名、キャビンの利用可能空間6.5x2.3m。

演者は、(株)日本飛行船のご厚意により、2006年12月5日、ツェッペリンNTに乗船し、広島から岸和田までの6時間の飛行で、瀬戸内海・北側の沿岸域を空中観察した。その結果、スナメリを発見し、沿岸の海藻類の繁茂情況を観察し、映像収録することができた。これらの観察記録の検討から、飛行船を観測用空中プラットホームとして利用することは大型海洋生物や沿岸生物環境に関する観測と監視等のために非常に実用的で効果的であることが明らかとなった。

日本生態学会