| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A2-10

広島県におけるブッポウソウの個体群保全の成功例

飯田 知彦(広島希少鳥類研究会)

電話柱等人工構造物に巣箱を架設することで,絶滅のおそれのある希少鳥類ブッポウソウEurystomus orientalisの保護を行っている.1988年に日本で初めて広島県で行われたこの保護活動は,その後同様の方法により現在全国に広がりを見せ始めている.ブッポウソウの減少原因は,繁殖巣穴のある木製電話柱等が,時代の流れでコンクリート製の柱に交換され巣穴が消失する事にほぼ限定されていたため,交換されたコンクリート製の柱に巣箱を架設する保護を開始した.広島県のブッポウソウの繁殖つがい数は最も減少した時の1980年代半ばには8つがいにまで減少したが,保護活動の開始により徐々につがい数が回復し,2007年には広島県内で約270つがいにまで回復した.この保護の過程では,単に繁殖つがい数を回復させるだけではなく,地域ごとに個体群の維持を目的としたり,または増加してきた場合には広く分散させたりするなど,個体群保護と管理の概念も実施し,現在ではほぼ広島県全体で繁殖するようになった.人工構造物への巣箱架設によるブッポウソウの保護は,希少動物保護の数少ない成功例であり,また個体群管理の実践例となると思われる.

参考

飯田知彦(1992)電柱を営巣場所にするブッポウソウ Eurystomus orientalis の繁殖分布.Strix 11:99-108.

飯田知彦(2001)人工構造物への巣箱架設によるブッポウソウの保護増殖策.日本鳥学会誌50:43-45.

日本生態学会