| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A2-13

スマトラカワウソの分布と保全

佐々木 浩 (筑紫女学園大学短期大学部)

東南アジアには、スマトラカワウソL. sumatrana を含め4種のカワウソが生息している。IUCN/SSCカワウソ専門家グループ(1990)は、スマトラカワウソをカワウソの中で調査の必要性が最も高い種とし、現在もIUCNレッドリストにおいても情報不足DDとされている。演者は、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアにおいて調査、普及啓発活動を行い、分布、分類についても研究を行った。

スマトラカワウソはユーラシアカワウソの一亜種であるという意見もあったため、分類については、Klaus-Peter Koepfliらと共にDNAからの研究を進め、タイでは捕獲した個体から、ベトナムでは毛皮からサンプルを採集して、DNAの分析に用いた。その結果、スマトラカワウソは独立種であると考えることが妥当であることが明らかになった。

形態や分布については、ロンドン自然史博物館、ライデン国立自然史博物館、サラワク州立博物館、医学調査研究所(クアラルンプル)、ブルネイ博物館、スンガイリアン森林センター(ブルネイ)、ラッフル生物多様性研究博物館(シンガポール)、スミソニアン自然史博物館や個人が収蔵する標本について調査を行った。その結果、頭骨の形態からも、東南アジアに生息する4種の区別が可能であることも明らかになった。

分布については、1995年以降では、タイ、ベトナム、カンボジア、マレーシア半島部、ブルネイ、インドネシアのスマトラ島において確認できたが、ミャンマー、シンガポール、マレーシアボルネオ島では古い記録しか確認できなかった。

昨年10月に韓国で行われた国際カワウソ会議において、レッドリストの新カテゴリーについて議論が行われたが、情報不足か、絶滅危惧かで意見が対立し、今後、生息地の分析などを各国で進め、数値化されたデータで議論を行うことを確認した。

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