| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) C1-15

二年草コホート間の負のフィードバック:フクドの例

*荒木悟,國井秀伸(島根大・汽水域研究セ)

複数のコホート(同齢集団)が混生する二年草では、被陰などの影響で後続のコホートの成長が阻害されることがある。河口域の沿岸に発達するフクド群落で、このような密度効果の影響を調べた。2005年の秋、太田川放水路(広島市)沿岸の群落に、(A)開花・未開花の両方の個体が生育する領域、(B)未開花の個体が高い密度で生育する領域、(C)個体が生育していない裸地の3領域がみられた。2006年の春に出現した実生は(A)(B)(C)の順に多かったが、(A)(B)では成長が悪く、大半が2006年の12月までに枯死した。逆に(C)の実生の生存率は高かったため、2006年に発芽したコホートは主に(C)で定着した。2005年の秋に(A)(B)で未開花だった個体の多くが2006年の秋に開花、枯死したので、翌2007年の春に発芽した実生は、前年とは逆に(A)(B)では少数の、(C)では多数の先行コホートと混生することになった。2007年に出現したコホートは(A)(B)で生存率が高く、(C)では8月まで消滅した。これらのことから、フクドでは(1)先行するコホートの密度が高い領域で後続のコホートの定着が阻害され、(2)その結果、狭い範囲で見ると年によって齢構成が変化していると考えられた。

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