| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-07

オオヒキガエルが大型土壌動物群集に与える影響 −小笠原母島の事例−

岸本年郎, 戸田光彦,鋤柄直純 (自然環境研究セ),八巻明香(横浜国大・環境情報)

海洋島である小笠原諸島の土壌動物は、その多くが固有種か、比較的近年になって非意図的に導入された外来種から構成されると考えられる。在来の陸貝のほとんどが固有種で、島嶼内で適応放散を達成していることや、等脚類では12種中10種が固有であること等が知られており、近年、ハネカクシやゴミムシ等の甲虫類でもこれまで未知であった固有種の存在が明らかになってきた。今後、土壌動物のファウナやその起源に関する研究が期待されるところである。一方で、父島及び母島では特定外来生物であるオオヒキガエルBufo marinusが、多数生息しており、土壌動物へ影響を及ぼしていることが推測されるが、詳細については不明である。そこで、現状把握を目的に、2004年にオオヒキガエルの食性について捕獲個体の胃内容物調査を行い、2006年から2007年にかけて土壌節足動物群集についてハンドソーティングによる調査を実施した。

結果、胃内容物については固有種を含む9綱24目43科83種が餌動物として確認され、様々な動物を捕食していることが明らかになった。その構成を25年前の1979年に実施された調査(Matsumoto et al., 1984)と比較すると、陸産貝類、ムカデ類、ヤスデ類、甲虫類等が減少し、外来種であるワモンゴキブリやメクラヘビの割合が増加するなど、大きく異なっていた。またカエルの密度が低い場所や不在の場所では大型土壌節足動物の種数・現存量ともに高く、特に、カエルが侵入・定着している地域では、地表徘徊性の固有等脚類がほとんど確認されなかった。以上より、オオヒキガエルが大型土壌節足動物群集に大きな影響を与えていることが示唆された。

日本生態学会