| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) D2-03

四国地方のヒノキ人工林における間伐後の林床植生の経年変化

*野口麻穂子(森林総研・四国), 酒井敦(国際農林水産業研究セ), 奥田史郎, 稲垣善之(森林総研・四国), 深田英久(高知県立森林技術セ)

ヒノキ人工林における間伐後の林床植生の回復・発達過程を明らかにするため、林床植物の生活形ごとの種数や優占度、繁殖状況の変化を、間伐後6年間にわたって調査した。高知県津野町の標高の異なる2地域(落葉樹域:標高1150-1280m、カシ域:標高710m)のヒノキ林に間伐率50%の間伐処理区および対照区を設け、2002年に間伐を実施した。落葉樹域では25%と75%の間伐処理も実施した。各処理区には5m×5mのコドラートを4箇所設置し、2007年まで毎年1回以上、維管束植物種の被度と最大高、コドラート全体の植被率の記録を行なった。

落葉樹域では、間伐実施時点でわずかな植生しかみられなかったが、間伐率が高い処理区ほど植被率が急増する傾向を示した。間伐率50%以上の処理区ではその年のうちに種数が大きく増加したが、これは草本種の種数の増加によるところが大きかった。木本種の種数の増加は少ないが、被度や最大高は年数の経過とともに増加する傾向を示した。また、繁殖が認められた種の数は間伐処理区で対照区に比べ有意に多く、その80%以上を草本種が占めていた。一方、カシ域の調査地では当初から、常緑性樹種を含む木本種が優占する林床植生が分布していた。ここでは間伐処理区での種数の増加が落葉樹域に比べ少ない傾向がみられ、2007年の優占度が高かった種には木本種が多く含まれていた。間伐処理区での繁殖が認められた種に占める草本種の割合も、比較的低かった。これらの結果から、地域の気候条件に応じた植生タイプの違いや、間伐実施時点の植生の状態によって、間伐後の林床植生の発達過程が大きく異なる可能性があると考えられた。

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