| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) D2-04

アオサギの繁殖コロニーの存在と消失が林床植物群落に及ぼす影響

*上野裕介(北大・水産),野田隆史(北大・地球環境),堀正和(瀬戸内水研)

鳥類の繁殖コロニーは、頻繁に規模が変化し、しばしば消失する。これまでに魚食性鳥類の繁殖コロニーでは、周辺部に比べて、陸上植物のバイオマスや種組成が異なることが知られている。しかしながら鳥類の繁殖コロニーの規模の変化と消失が、植物群落の動態に及ぼす影響を調べた例は、ごくわずかである。

森林の樹冠部に集団で営巣する魚食性鳥類の一種であるアオサギは、林床へ落とすフンによって繁殖コロニー内の林床植物のバイオマスを減少させる(Ueno et al. 2006)。北海道厚岸湾岸にある繁殖コロニーは、近年その規模が縮小し、その後、消失した。それに伴って林床へのフンの落下も途絶えた。このような場合、アオサギのフンによって減少していた林床植物群落のバイオマスや種数が時間とともに回復し、種組成も変化するだろう。また、同じコロニー内であってもアオサギの営巣密度は場所によって異なるため、コロニー消失後の林床植物群落の時間変化は、場所によって異なっているかもしれない。

そこで本講演では、北海道厚岸湾岸にあるアオサギの繁殖コロニーのある森林とその周辺部の森林の林床における過去6年間の調査から、1)アオサギの繁殖コロニーの縮小および放棄に伴う林床植物群落のバイオマスと種数、種組成の時空間変化を明らかにし、2)これら林床植物群落のバイオマスと種数、種組成の時空間変化を引き起こすメカニズムを推定するために、アオサギのフンおよびその他の要因の影響について解析した結果を紹介する。

日本生態学会