| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) E1-04

アマモ場葉上動物群集の空間変異に対する環境要因と捕食者の効果

*恵良拓哉(千葉大・自然科学),仲岡雅裕(千葉大・理),石井光廣(千葉県水産総合研究センター),大藤友季子(千葉県水産総合研究センター),堀正和(瀬戸内海区水産研究所)

アマモ場には、現存量および種多様性が高い動物群集が形成されるが、その群集構造はさまざまな要因により複雑に変化する。極めて開放的な沿岸生態系の1つであるアマモ場生態系の保全・再生を考える上では、複数の局所群集間の変異とその関連性を考慮することが重要であると思われる。本研究では、東京湾に離散的に分布する複数のアマモ場を対象に、移動性葉上動物群集の空間変異パターンおよびその決定要因について検討した。

2006年夏季に東京湾東側に分布する11ヶ所のアマモ場でそりネットを用いて葉上動物を採集した。得られた試料は可能な限り細かい分類群に分け、(1)異なる地域間、(2)異なるアマモ場間、(3)1つのアマモ場内の採集点間の3つの空間階層で群集構造(類似度、多様度指数、種数、個体密度)を比較した。また、葉上動物に影響を与えると思われる要因として、水質など物理化学的要因、河川など地理的要因、アマモ場の面積などハビタットの構造的要因、および魚による捕食圧を検討した。

群集構造の各指標はアマモ場間の変異が最も大きかった。従って、群集構造の変異に寄与する要因は、数100m〜数km程度の空間スケールで強く作用していると考えられる。各優占分類群の個体密度を目的変数とする重回帰分析の結果、複数の環境要因が分類群ごとに異なる効果を及ぼすことで群集構造の変異が生じている可能性が示された。特に、河川などの周辺環境の効果が葉上動物群集に影響していることから、アマモ場における景観生態学的研究の必要性が示された。

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