| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-08

在来植物は外来植物より喰われやすいか?

*黒川紘子(東北大・生命), Peltzer, D. (Landcare Research, NZ), Wardle, D. (Swedish Univ. of Agri. Sci., SE)

世界で最も外来生物の多い国の一つであるニュージーランドでは、外来生物による在来生態系の改変が懸念されている。在来植食者相の比較的貧弱なニュージーランドの在来植物は、被食防衛機構を十分に発達させていないと考えられる。そのため、ニュージーランドの在来植物は外来植食者に対して脆弱かもしれない。

そこで本研究では、ニュージーランドの在来植物と外来植物の食われやすさを比較した。南島北東部の氾濫原とその周りの二次林に出現する在来低木20種と外来低木20種を、広食性の外来性ナメクジに実験的に食わせ、各種の食われ易さを測定した。在来・外来低木はそれぞれ窒素固定植物10種と非窒素固定植物10種を含む。外来性ナメクジはニュージーランドで一般的に見られるものである。また、各種の葉の性質(養分、防衛的性質等)を測定した。

実験の結果、在来植物と外来植物の食われやすさに有意な違いはなかった。しかし、在来植物でも外来植物でも、窒素固定植物は非窒素固定植物より有意に食われやすかった。窒素固定植物は非窒素固定植物より葉の窒素濃度が高く、植物の食われやすさは葉の窒素濃度と有意な正の相関関係にあった。また、窒素固定植物では、総フェノールなどの被食防衛物質濃度と葉の食われやすさには有意な負の相関関係があった。このことから、在来植物は外来植物より特に食われやすいということはなく、在来植物でも外来植物でも葉の窒素濃度や総フェノール濃度などの性質が葉の食われやすさを決めているということが示唆された。

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