| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-15

砂質干潟ベントス群集の植物プランクトン摂食ギルドにおける空間分割

*玉置昭夫(長崎大・水産),安形仁宏(長崎大・院・生産科学)

有明海東岸の広大な砂質干潟では珪藻プランクトン摂食ギルドに属する4種のベントス個体群が対照的に消長してきた.アサリの漁獲量は1970年代―1980年代初頭に著しく増えたが,それ以降急減した.逆に二枚貝のシオフキ,地下深い巣穴に棲む十脚甲殻類のニホンスナモグリとアナジャコが生息域を拡大した.これらの消長には空間をめぐる種間競争が関与していた可能性がある.本研究では白川河口の干潟を対象とし,干潟全体での4種の分布パタンを2004―2006年の各4―6月に調べた.最大118地点において二枚貝は方形枠で直接採集し,十脚甲殻類は巣穴開口部を計数することで密度を記録した.2004年,4種は干潟の1/4ずつの面積を排他的に占めていた.縣濁物食者である二枚貝とアナジャコは小潮平均低潮線(中潮帯)より沖側に分布していた.二枚貝は低潮帯に分布していたが,シオフキとアサリの生息域は(干潟の沖に向かって)左右に分かれていた.アナジャコは中潮帯に,また,堆積物食者であるニホンスナモグリは高潮帯に分布していた.アナジャコ類とスナモグリ類はそれぞれ基質を硬化・軟化させる作用によって排他的に生息すること,また,両者とも貝類の新規加入を阻害することが知られている.2004年9月,アナジャコ個体群は台風によりほぼ壊滅した.ニホンスナモグリの分布帯は毎年80 mの幅ずつ縮小した.これはアカエイの捕食によって引き起こされた可能性がある.十脚甲殻類が消失した場所には二枚貝幼生が高密度で着底したが,成貝まで生き残ったのはシオフキのみであった.演者らの先行研究により,(1) 干潟上水の流動により,中―高潮帯の基質粒子は動きやすいこと(=不安定),(2) アサリとシオフキはそれぞれ安定・不安定な基質に適応していることが示唆されている.

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