| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-03

アズキゾウムシにおけるオスの求愛頻度に応じたメスの産卵戦略

*岸茂樹(京大・生態研)

(事情により発表内容は演題と異なります。申し訳ありません。)「産卵基質に応じたアズキゾウムシメスの交尾タイミングの進化」について発表する。ほとんどの場合、オスは交尾前努力が大きいので、メスに対して常に求愛するのが適応的だけれども、メスは交尾後の産卵を考慮して交尾する必要がある。室内系統のアズキゾウムシCallosobruchus chinensisは完熟したアズキVigna angularisを用いて累代飼育がされてきた。メスは交尾後すぐに産卵をはじめるので、交尾する必要がないときはオスの求愛を忌避するはずである。本研究ではアズキの供給パターンがアズキゾウ処女メスの交尾前期間を決めているか調べた。jC系統は成虫の羽化後数日経った後アズキを交換して維持されてきたのに対し、jCS系統は羽化後すぐに産卵できる状態で維持されてきた。そこで処女メスの交尾前期間を調べたところ、jCよりもjCSで有意に短かった。次にjCの飼育方法をjCSと同様にした個体群を用意し10世代後に交尾前期間を調べるとjCSと同じくらいに短くなった。アズキゾウ処女メスの交尾タイミングはアズキの供給パターンに合わせて進化することがわかった。交尾前期間を調べる実験においてアズキを多くいれた処理区と隠れ場所を設けた処理区では、どちらにおいても交尾前期間が延長した。比較のために野外から採集して3世代後のアズキゾウ処女メスの交尾前期間を調べたところ、jCと同じくらい長かった。野外ではアズキゾウは未熟豆を利用しているから、完熟豆は産卵基質として「しょうがなく」利用していると考えられる。そのうえでメスはオスから隠れることで交尾のタイミングをコントロールしていることが示唆された。

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