| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-12

協力行動と罰の反応関数の進化について

中丸麻由子(東工大), Ulf Dieckmann (IIASA)

協力行動の進化は進化生態学の研究トピックの一つである。協力行動は自らの適応度を下げてまで相手の適応度を上げる行動であるが、人間も含め生物には存在する。この行動の進化条件について様々な説明があるが、本発表では罰行動と協力行動の連動について扱う。非協力者へ罰をすることによって協力行動が促進されるといわれるが、罰実行にはコストがかかる。もし協力行動と罰行動が連動しているなら、別の協力者と協力しあうことで利益を得て、罰実行コストも穴埋めが可能となる。

先行研究では、協力する/しない、罰する/しない、として戦略を設定して協力と罰の共進化条件を探った進化ゲーム研究が多い。が、相手からの協力レベルによって罰反応レベルを変化させている可能性については研究されていない。

そこで本研究では、どのような罰反応関数型の時に、協力レベルの進化が促進されるのかコンピュータシミュレーションや数理モデルを用いて調べた。隣接個体間でゲームをすると仮定した(格子モデル)。各個体は協力レベルと罰反応関数に関する形質3つ(罰強度、閾値、罰反応関数型を決める変数)を持つとする。自分の罰反応関数に従って、相手からの協力レベルに応じて罰レベルを意思決定をする。相手からの協力レベルで利得は増えるとするが、罰された分だけ利得が減少する。協力コストや罰実行コストも仮定する。どのような罰の反応関数型の時に、罰をしない非協力者しかいない初期集団から、高協力レベルで罰も行う形質へと進化するのか調べた。すると、閾値よりも低い協力レベルの相手に対しては、レベルによらず同じ罰強度を返すが、閾値よりも協力レベルが高い相手には全く罰をしないという罰反応関数の時に、協力レベルが高く進化する事がわかった。また、集団内でランダムに相互作用をする場合は、協力レベルは進化しなかった。

日本生態学会