| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-14

インフルエンザウイルスにおける多系統間の共存条件

*大森亮介(九州大学数理生物学研究室)

インフルエンザウイルスの抗原連続変異による系統進化を説明するために,表面糖タンパク質ヘマグルチニン・ノイラミニダーゼ遺伝子上のエピトープ(抗原性を決定するアミノ酸座位)の突然変異と宿主交差免疫を取り入れた宿主個体ベースの確率論モデルを解析する.

インフルエンザウイルスの抗原決定座位のRNA塩基配列の突然変異を起こす座位は2箇所のみであると仮定し、一定の突然変異率により変異が起きるとする。1系統のみが流行している状態からどのようにウイルスが多様化し流行タイプが切り替わるかをシミュレーションで解析した。また、決定論モデルと確率論モデルの違いが突然変異率や人口にどう依存するかを議論する。系統間におけるエピトープ配列の相違と交叉免疫応答の強さの関係の関数形によって 流行系統が周期的変動を示すかどうか、さらにその周期や振幅、そして流行グループを構成する系統の種類組成そのものが変わる。また、有限集団サイズモデルで系統の絶滅が起きるような状態では系統進化の様子が決定論モデルと大きく異なる。

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