| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) I2-10

非対称ゲームにおいて突然変異が形質の進化に与える影響

*上原隆司(九大・理), 巌佐庸(九大・理)

量的形質の進化ダイナミクスに関してはadaptive dynamicsを用いて様々な研究が行われているが、ここでは突然変異が起こる過程を見直して、微小な変異だけではなく形質値の距離に関わらない突然変異が起こると仮定し、そのような突然変異を入れたレプリケータ方程式を用いて2つの異なる立場のプレイヤーがそれぞれ異なる連続的形質を持つ非対称ゲームの解析を行った。

このような突然変異を入れたモデルで解析を行うと、集団は一つの形質値へと収束するのではなく、形質値とともに頻度が単調に増加、あるいは減少する連続的な形質の分布が求められた。このモデルでは突然変異は集団の形質分布をフラットにするように働くので、平衡状態における集団平均形質値は突然変異率が十分に低ければゲームのESSとほぼ一致するが、突然変異率を大きくしていくと集団平均形質値は両形質の平面上のちょうど中央(連続形質の{上限値+下限値}/2)へと近づいていく。ただし、中間の突然変異率を用いて計算を行うと、平均形質値はESSとこの中間の値の間の値をとらず、ゲームの利得行列から導かれるESSからは予想できないような、極端に高い値や低い値へと収束することがあることが分かった。

この結果を元にモデルの妥当性と、非対称ゲームにおけるESSと突然変異、及び突然変異率の関係について議論したい。

日本生態学会