| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-012

モンゴルステップにおける持続可能な放牧利用法の開発−調査地の初期植生と現存量の推定−

*下田勝久(畜草研),山崎正史,平野聡,鳥山和伸,進藤和政(国際農研セ),Baasanjalbuu B.,Pagmaa D.,Nasangerel L.,Tumenjargal D.(モンゴル国農大)

国際農林水産業研究センターでは、脆弱な環境条件にある北東アジア(モンゴル、中国)の乾燥草原において、草地への放牧圧を軽減し、その持続的利用を可能にする条件を解明するとともに、牧民の所得確保と両立し得る持続的農牧システムを開発するために、「北東アジア乾燥地における持続的農牧システムの開発」というプロジェクトを行っている。モンゴルでは、ウランバートルから北方180kmの森林性ステップ植生に属するモンゴル国立農業大学の農場周辺に、牧柵で囲った放牧試験区を計23ha設置し、放牧圧・畜種・補助飼料の給与量を変えて植生や生産量・採食量等の測定を行い、持続的利用を可能にする条件を明らかにする試験を開始した。

各試験区における7月末の植生調査の結果、31種/90 m2が出現した。しかし、1コドラート当たりの出現種数はN=5.9±1.4/m2、Shimpson の多様度指数はH=0.687、Shannonの多様度指数は H'=1.51と多様性の低い草地であった。又各試験区はStipa kryloviiが優占する草地(平均被度50%以上)であり、イネ科上位4種で被度合計の6割以上を占め、ヨモギの仲間2種が3割、Carex duriusculaが1割、計99%を上位7種で占めた。相対積算優占度でも同様の傾向であった。各試験区の現存量の推定には、実測値との相関が非常に良かったライジングプレートメーター使用し、8月初旬の現存量を推定したところ平均1.87±0.49ton/haであった。また、現存量の試験区間での違いは小さかった。

今後、4年間の放牧試験により植生や生産量の変化を追跡調査する予定である。

日本生態学会