| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-026

砂礫地における植生構造と粒度組成の関係-高山風衝砂礫地・河床・海浜について-

*塩野貴之,持田幸良(横国大・院・環境情報)

植物の生育限界立地である表層土壌の未発達な砂礫地では,表層堆積物の粒度組成が植物群落に大きな影響を及ぼしていると考えられる.そこで本研究では高山風衝砂礫地,河床,海浜を対象として粒度組成と植生発達および種組成との関係を明らかにすることを目的とした.調査地は,高山風衝砂礫地は赤石山脈と飛騨山脈,八ヶ岳,河床は多摩川と相模川,海浜は太平洋沿岸の砂浜と礫浜とした.各調査区で植生調査を行うとともに,表層堆積物の粒度組成と直径4 mm以下の充填粒子の粒度組成を分析した.

風衝砂礫地では表層礫の粒径が大きいほど植被率が増加した.海浜では砂浜,礫浜ともに粒径が大きいほど汀線から植生帯までの距離が短くなった.河床では,河道からの比高が高く乾燥した「川原」においては充填粒子の粒径が小さいほど草本植生が発達しており,比高が低い「河道沿い」では植被率と粒度組成には相関が見出せなかった.以上より風衝砂礫地や海浜では表層堆積物の粒径が大きいほど堆積物の移動量が減少するため,すなわち攪乱強度が減少するため植生が発達すると考えられた.一方,川原では充填物質の粒径が小さいほど適潤になるため,植生が発達すると推察された.攪乱が卓越する風衝砂礫地,河道沿い,海浜の種組成は表層堆積物の粒径により明瞭に区分された.また粒径が大きい立地ほど休眠芽の位置が高い種が優占していた.地下器官型は粒径の小さい立地では地下茎を持つ種が優占するが,粒径が大きいと匍匐茎を持つ種が増加した.さらに,種子散布型や植物体高にも粒径と関連性が認められた.これらのことから各粒径に適応可能な植物の生活型が異なるため,粒径により種組成に相異が生じるものと考えられる.このように各砂礫地での攪乱要因や環境条件は異なっていても,粒度組成と植生発達および生活型との対応関係には一定の傾向があることが示された.

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