| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-047

多雪地域におけるミヤマイクビゴケとイクビゴケ個体群の分布に影響する環境要因

白崎 仁(新潟薬大・薬・生物)

蘚類ミヤマイクビゴケ(Diphyscium foliosum)とイクビゴケ(D. fulvifolium)について、日本海側の多雪地域にあたる新潟県とその隣接地域の環境要因と両種の分布の違いとの関連性をさぐってみた。ミヤマイクビゴケは主に内陸の山岳地域に、イクビゴケは海岸沿いの低地から内陸部に偏っている。両種の生育地は、林縁・山道沿いに生育することが多い。環境要因の内で、降水量に対する両種の分布頻度にはあまり差がなかったが、年平均気温、暖かさの指数、最深積雪量、および8月の可能蒸発散量の要因については、両種の分布頻度に有意な差異があった。垂直分布に密接に関連する要因は、イクビゴケは年平均気温、暖かさの指数、および8月の可能蒸発散量、ミヤマイクビゴケは年平均気温だけのようである。イクビゴケは、平均気温により強く限定されるらしい。胞子体の発達状態と海抜の関係については、ミヤマイクビゴケは、受精と胞子散布の時期が海抜に関係なく、ほぼ一斉だが、イクビゴケは海抜によって受精と胞子散布の時期が変わるようである。

まとめ

1.両種の分布は、冬季の降水量や積雪量に影響されない。2.ミヤマイクビゴケの分布は、内陸部に偏る。これは、年平均気温によって限定されている。海抜の上昇と気温の低下に対しては、胞子体の成熟期間を短縮することによって適応している。3.イクビゴケの分布は、海岸沿いの低地から内陸部に及ぶ。これは、年平均気温、暖かさの指数、8月の可能蒸発散量によって限定されている。4.その胞子体の成熟期間のずれは、暖かさの指数に対応していることを示唆する。5.イクビゴケの生育地は、比較的排水の良い崖にある。それは、可能蒸発散量を尺度とする耐乾燥性の強さが反映していると考える。

日本生態学会