| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-053

給水パターンが植物の成長におよぼす影響の個体群密度による変化

*萩原陽介,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・院・生命)

植物個体の成長は、給水パターンにより影響を受け、その影響のあらわれ方は栄養塩量によって異なる。個体群では、競争により個体が利用できる資源量が変化し、給水パターンへの植物の反応にも影響があらわれる可能性がある。そこで、給水パターンと栄養塩量の組合せが植物成長におよぼす影響は植物の生育密度によって変化するという仮説を栽培実験により検討した。競争が厳しい高密度下では、給水パターンが成長におよぼす影響は強まるため、栄養塩量によらず、給水頻度の増加が成長量の増加をもたらすと予測した。一方、低密度下では、給水パターンの影響は弱く、栄養塩量が成長の律速とならない富栄養下でのみ、給水頻度の増加が成長量の増加をもたらすと予測した。

実験材料にはシソ(Perilla frutescens)を用いた。給水パターン(高・低頻度給水)、栄養塩量(富・貧栄養)、生育密度(鉢あたり1・3・6・9個体)の3要因を設定した。実験期間全体で供給する水分量は、給水パターンによらず一定とした。48日間の給水処理後、鉢ごとの地上部重量に対する要因の影響を3要因乱塊法の分散分析により解析した。

高頻度の給水では、低頻度の給水よりも地上部重量が大きい傾向があり、給水パターンの影響は高密度でより大きかった。6個体密度においては、富栄養下でのみ高頻度の給水で重量が大きかった。また、3個体密度においては、富栄養下では高頻度の給水で重量が大きかったが、貧栄養下では低頻度の給水で重量が大きかった。

高頻度の給水は、水の安定的利用を可能とし、植物の成長を増すと考えられる。また、競争が強まると、給水パターンの成長への影響は大きくなると考えられる。さらに給水パターンと栄養塩量の組合せが植物成長におよぼす影響は、競争の強さによって変化することが示唆された。

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