| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-076

スギ人工林に侵入した広葉樹の生産量に及ぼす地形の影響

井上貴文,榎木勉,井上晋(九州大院・農)

暖温帯上部に位置する高齢人工林において、侵入した広葉樹の生産性に及ぼす地形と植栽木であるスギの影響を明らかにした。調査は九州大学福岡演習林内の植栽後約140年が経過したスギ造林地に設置した1ha(100m×100m)のプロットで行った。プロットは10m×10mのグリッド100個に分割した。プロットは標高により、尾根部、斜面部、谷部の3地形に区分した。2005、6、7年に胸高周囲長15cm以上の幹の胸高周囲長を測定した。2006年には樹高も測定した。各グリッドの中央に開口部0.25cm2のリタートラップを設置し、2006年8月から1年間、毎月回収を行った。回収したリターはトラップごとに広葉樹とスギに分け、さらにそれぞれ葉と葉以外の部分に分類し、48℃で48時間乾燥後、重量を測定した。地形ごとに各グリッドのバイオマス(D2H)、リターフォール、直径成長に及ぼす微地形(凹凸度、傾斜角度)とスギの影響を解析した。

広葉樹およびスギの個体当りの直径成長量およびリターフォール(葉)量は0.2-0.3cm yr-1、40-60kg ha-1 yr-1と天然林や一斉人工林と同程度であった。直径成長量および胸高断面積合計当りのリターフォール量は尾根部から谷部に向けて増加傾向であった。尾根部では、広葉樹の直径成長量は凹凸度と正の関係が見られた。斜面部は、広葉樹の直径成長量は傾斜角度と正の関係が、リターフォール量はスギのバイオマスと負の関係が見られた。谷部では、広葉樹の直径成長量は凹凸度および傾斜角度と正の関係が、リターフォール量は凹凸度と正の関係、スギのバイオマスと負の関係が見られた。

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