| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-083

ミズキの生育段階に伴う空間分布パターンの変化 -母樹からの距離依存的な病害の影響-

*山崎実希, 清和研二(東北大院・農)

樹木の空間分布パターンは、生活史を通じてどのように形成されるのだろうか?

ミズキの実生は病原菌によって母樹からの距離や子個体の密度に依存して死亡することが分かっている。本研究は、ミズキにおいてどのくらいの生育段階まで病原菌が個体の生存や成長に作用し、個体群の空間分布パターンが形成されるかを明らかにすることを目的とする。

宮城県一桧山に設置した6ha試験地内に生育しているミズキ全個体の生育段階に伴う空間分布パターンの変化と成木と子個体との分布相関をL関数により解析した。その結果、ミズキの種子の分布は高い集中性を示したが、生育段階が進むに従って集中性は徐々に薄れ、成木はランダム分布になった。また、成木と種子の分布相関は同所的であったが、実生から幼木に生育段階が進むに従って成木との分布相関は独立性を増す傾向が見られた。これらの結果は、種子の多くが成木の付近に落下するものの、実生や稚樹が成木の近くでは成長が悪いか死亡しやすかったことを示唆している。

次に、分布パターンの変化の要因を探るため、試験地内にミズキ成木を基点とした扇状プロットを5つ設け、プロット内の環境条件(水分、光)、ミズキ稚樹の病害率と成長量および生残、成木の罹病葉の落葉数を調べた。また、隣接する二次林において、成木(n=5)からの距離別に菌体の落下数を調べ、成木や稚樹に感染する輪紋葉枯れ病菌の散布距離を推定した。その結果、病害の一次感染源と考えられる成木の罹病葉と菌体は成木からの距離に近いほど散布量が多く、ミズキの子個体の発病度と死亡率は成木に近いほど、また密度が高い場所ほど高かった。これらの結果は、ミズキ個体群において密度や距離に依存した病害が実生段階だけでなく稚樹段階まで作用し、成木のランダム分布の形成に影響することを強く示唆する。

日本生態学会