| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-091

北方林樹木グイマツのLEAFY相同遺伝子による開花制御

*岩崎(葉田野)郁(岡山県生物科学総合研究所),内山和子(北海道林試),小野清美(北大・低温研),渡辺一郎,八坂通泰,来田和人(北海道林試),原登志彦,小川健一(岡山県生物科学総合研究所)

我々は、北方林樹木のライフサイクルのひとつとして、「開花・結実」現象に注目し、その制御が環境にどのように影響を受けるのかを明らかにするため、北方林主要構成樹種カラマツ属グイマツ(Larix gmelinii var. japonica)を用いてシロイヌナズナの花芽形成遺伝子LEAFYの相同遺伝子LgLFYを単離し、LgLFYの発現と環境変化との関係を調べた。これまでに、LgLFYの発現は翌年に花となる芽で高く、5月から増加し9月に減少することがわかった。LgLFYの発現はシロイヌナズナ花器官形成遺伝子AGAMOUSのグイマツ相同遺伝子が発現するより前に開始することから、グイマツの花芽の決定に関与すると考えられた。回帰分析からグイマツでは5月の低温と6月の高温が翌年の豊作と相関が高いことがわかっている(内山、来田、黒丸、未発表)。2004年から2006年までの5月のLgLFY発現量を比較すると、5月に低温が続いた2005年では2004年、2006年よりLgLFYの発現時期が早まっていた。そこで接ぎ木グイマツを用いて低温によりLgLFYの発現が誘導されるかを調べた。その結果、4月下旬から5月中旬までの3週間の低温処理後に発現の上昇が認められ、低温によって誘導されることがわかった。また、2004年から2006年までのLgLFY発現量と翌年の開花数との関係を調べたところ、6月のLgLFYの発現量が高いほど、翌年の開花数が多い傾向が認められた。これらの結果から、グイマツにおいて花芽は5-6月の気温によって影響を受けて決定され、その決定にはLgLFYが関与することが示唆される。

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