| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-103

アマモにおける葉面積の環境変化に対する応答

*細川真也(港空研),中村由行(港空研),桑江朝比呂(港空研)

海草の葉は,光エネルギや炭酸だけでなく栄養塩をも獲得する重要な器官であり,その葉面積は資源獲得量を決める重要なパラメタの一つである.我が国における海草の代表的な種であるアマモ(Zostera marina)は地下茎の先端に数枚の束となる葉を有しており,個葉面積と葉数が変化することでシュート当りの葉面積(以下,総葉面積)は変化する.アマモの総葉面積は季節的に大きく変動することが知られている.本研究では,メソコスム水槽を用いて安定した物理条件下で多年性アマモを生育し,一年を通してアマモの総葉面積,個葉面積,葉数,開花時期と環境条件(光,水温)を調査し,アマモ総葉面積の季節変動をコントロールする条件について検討した.

アマモの総葉面積は,一年間で7.5倍の変化を示し,ピーク時期は開花時期と一致していた.総葉面積と個葉面積(三番目に若い葉の面積を個葉面積の代表とした)における偏相関係数は0.91であり,総葉面積と葉数における偏相関係数(0.53)よりも高い値を示した.この結果は,総葉面積は葉数よりも個葉面積に依存していることを示唆していると考えられる.個葉面積は,一年間で8.3倍の変化を示した.個葉面積のピークは開花時期とほぼ一致していたが,年変動と環境条件(光,水温)の変化との間に明確な関係は見られなかった.一方,葉数の季節変化はおよそ3から5枚であり,1.9倍程度の変化であった.また,葉数は葉寿命に依存し,葉寿命は水温と負の強い関係が見られた.

これらの結果は,アマモの個葉面積は環境条件よりも開花フェノロジーに依存し,総葉面積も開花フェノロジーによって変化することを示している.一方,葉数は水温の影響を強く受ける葉寿命に依存し,変動幅も大きくないことから,総葉面積をコントロールする重要なファクタにならないと考えられる.

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