| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-109

茨城県南部とその周辺におけるサギ類のコロニー消長

*越田智恵子(自然環境研究セ),徳永幸彦(筑波大・生命共存)

サギ類は集団繁殖を行ない、営巣地(コロニー)を中心に半径10km程の広い範囲で採餌を行う。最適なコロニーを選ぶためには、周囲の環境を熟知する必要があるが、その広大な範囲内の情報をすべて把握するのは難しいと考えられる。では実際に、サギ類は何を基準としてコロニーを選んでいるのだろうか。

本研究では、1984年から2006年までの茨城県南部とその周辺のサギ類のコロニー分布の記録を用い、コロニーの存続年数を「選ばれやすさ」の評価関数として、1)周辺環境の影響と2)周辺コロニーの影響を検証し、1)に関してはコロニー周辺の水田、河川、森林、建物、幹線道路の面積を用いた重回帰分析を行い、2)に関しては周囲のコロニーとの距離とその存続年数を用いた相関分析を行った。 

その結果、コロニーから半径10km以内では水田と森林が存在する面積と森林と道路が存在する面積が存続年数に影響し、半径5km以内では建築物の面積と森林と道路が存在する面積が存続年数に負の影響を与えていた。このことは、広いスケールでは主に餌場や営巣地の面積が、そしてより小さなスケールにおいては建築物などの面積がコロニー選択の基準として使われることを示唆する。また、周囲に存続年数の長いコロニーが少ない場所ほど、コロニーの存続年数が長い傾向が見られた。これは、餌場をめぐるコロニーレベルでの競争を示唆する。さらに、人為撹乱を受けた4割のコロニーのうち、6割がすぐ近くに新しいコロニーを形成した。以上の結果から、周辺の餌場や営巣環境が良く、周辺との競争が少ないコロニーでは、サギ類を追い出そうと撹乱しても、すぐ近くにコロニーが再形成される可能性が高いことが予想される。

日本生態学会