| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-112

ブドウガイの産卵に対する水温と餌の影響

*尾崎 健太郎(北大・水産), 和田 哲(北大院・水産)

ブドウガイは1年生の腹足類で、生涯に1度の繁殖期をもち、今回調査を行った函館志海苔海岸での繁殖期はおおよそ5月〜10月である。先行研究により、野外におけるブドウガイの産卵頻度や、1卵塊あたりの卵数、卵サイズなどの繁殖形質は、水温と餌により決定されている可能性があること等が示唆されている。しかし、実験的に環境要因を検証した例はない。

そこで本研究では、ブドウガイの繁殖形質に対して水温と餌の種類がどのような影響を与えるかを検証するために、飼育実験を行った。飼育水温をセ氏12度、16度、20度の3条件、餌として与える海藻をウスヒトエグサ(緑藻)とウミトラノオ(褐藻)の2種、計6条件の実験群を設定し、実験を行った。実験開始日は、12度群と20度群はブドウガイの繁殖期前の4月3日から、16度群は繁殖期開始直後の5月9日からとし、すべての実験は6月30日に終了した。実験期間中に得たデータは、1卵塊あたりに含まれる卵数、卵サイズ、産卵した個体の体長、産卵日である。

その結果、褐藻群より緑藻群のほうが、1卵塊あたりの卵数は多く、また12度群より20度群のほうが産卵頻度が多かった。12度褐藻群においては産卵は見られなかった。一方、16度群では、産卵頻度と餌の違いによる1卵塊あたりの卵数の違いは見られなかった。それぞれの実験群において、初産卵時の親個体の体長と卵数との間には正の相関が見られたが、全産卵における親個体の体長と卵数との間の相関はそれより緩やかになった。

発表では、その他の結果もあわせて考察したい。

日本生態学会