| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-117

メスの発情の同調性がオスの繁殖戦略に与える影響

*布施名利子, 粕谷英一(九州大・理)

メスにとって交尾を回避したいオスからうける求愛はハラスメントである。近親交配を回避するメスにとって、血縁オスからうける求愛はハラスメントであり、避けられれば有利である。メスは自分への求愛よりも血縁オスにとって有利な選択肢を提供できれば、そのようなハラスメントを回避できるだろう。オスがメスに求愛することには時間的、エネルギー的コストがかかる。オスにとって、自らの求愛を受け入れる可能性の低いメスに対する求愛は効率が低く不利であり、もっと効率の高いメスがいればそちらに求愛したほうがよいと考えられる。メスが近親交配を回避するとき、オスにとって血縁メスは、求愛を受け入れる可能性の低いメスである。

近くにいるメスが同調して発情すると、オスにとっては、どのメスに求愛にいくかという選択肢が生じることになる。メスは同調して発情することにより、複数のメスから求愛相手を選ぶ機会をオスに生じさせ、交尾を受け入れたくない血縁オスからの求愛というハラスメントを軽減することができると考えられる。

本研究では上記の予測を乱婚のノネコを用いて検証する。オスの求愛には時間的なコストがかかる。雌雄ともに血縁者との交尾を避けることが分かっている。また、行動圏がよく重複するメス同士ほど発情が同調することも明らかになっている。このような発情様式は、複数の発情メスが空間的にかたまって存在する状況をうみ、求愛を行う相手をオスが選択できる機会を作る。このようなとき、オスはより交尾を受け入れやすい血縁度の低いメスに行うことで交尾成功を上げることができると考えられる。このことは、発情メス数が多い日は少ない日よりも求愛の見られた雌雄のペア間での血縁度が低いことを予測する。本講演ではこの予測を野外におけるノネコの観察データを用いて検証する。

日本生態学会