| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-121

寄生バチMelittobiaにおける処女雌の繁殖戦略

*安部 淳(岐阜大・応用生物),TM Innocent,SE Reece,SA West(エディンバラ大・進化生物)

ハチやアリなどの昆虫は、半数倍数性の性決定様式を持つため、処女雌であっても半数体の雄卵を産むことにより繁殖成功を残すことができる。しかし、寄生バチMelittobia属の雄は、羽化した寄主から分散しないため、処女雌が単独で産卵する場合、雄ばかりを産んでも息子たちに他の雌と交尾する機会はない。処女雌は数個の雄卵を産み、羽化した自らの息子と交尾し、その後雌雄を産卵することが知られている。今回は、処女雌が他の交尾雌と一緒に同じ寄主に産卵する場合、単独で産卵するときに比べ、産卵行動を変化させるかどうかについて検討する。この場合、処女雌の息子は交尾雌の娘と交尾でき、交尾雌の息子と競争関係にあるため、処女雌は単独で産卵するときよりも多くの息子を産卵すると予測される。実際に、処女雌を交尾雌と同じ寄主に産卵させ、処女雌の息子数をマイクロサテライトDNAマーカーを用いて測定したところ、予測どおり単独で産卵するときよりも多くの息子を産卵することがわかった。しかしながら、実際に産卵された息子数は、数理モデルを用いて進化的に安定な戦略を求めた予測値よりも少なかった。この理由は、処女雌が交尾後の産卵のために資源を残しているためと考えられるが、数理モデルで考慮しなかった効果についても考察する。

日本生態学会