| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-127

チゴガニ雌の雄サイズ及び交尾巣穴に対する選好性

*野島崇,逸見泰久(熊大・合津マリンステーション)

スナガニ類の代表的な種であるシオマネキ属では雌による配偶者選択に関する研究が近年盛んに行われており、数多くの報告がある。例えば、雄の体サイズや、交尾を行う場となる雄の巣穴の形状、雄のwavingや、雄の巣穴付近に構築する構造物の有無(hood, semidome等)などが雌の配偶者選択に影響を及ぼしていることが報告されている。しかし、多くの場合、交尾相手の選択には多くの要素が複合的に作用しており、どの要素が重要なのかは過去の研究でもはっきりとしていない。これは環境条件や生理的な条件等、様々な要因で選択の基準が多様化しているからであると考えられる。

一般的に、スナガニ類には、雌が雄の巣穴に入り交尾を行う巣穴内交尾と、干潟表面で雄が雌に近寄って行う表面交尾の2つの交尾様式があり、本研究の対象種であるチゴガニは、巣穴内交尾のみを行う。また、本種の雄は両方のハサミ脚を上下に振るwavingを頻繁に行う。チゴガニの配偶者選択という視点からの研究はこれまで詳細には行われていない。よって本研究では、熊本県白川河口に生息するチゴガニ個体群において、特に配偶者選択に影響を及ぼしていると考えられる、体サイズ、及びハサミ脚のサイズに対する選好性を調べるとともに、交尾を行う巣穴に対してどのような形状のものが好まれるかを調査した。

体サイズに対する雌の選好性を調べた結果、雌は自身よりも大きい雄を選ぶ傾向が見られたが(傾きの差の検定:P<0.001)、ハサミ脚のサイズに対する選好性は見られず、巣穴に対する選好性については、長い巣穴を選んでいる傾向が見られた(傾きの差の検定:P<0.001)。これらの結果より、チゴガニの雌の配偶者選択は、巣穴に対する選好性の傾向が低いことから、巣穴に入る以前のwaving等の視覚的な選好性がより重要であると考えられる。

日本生態学会