| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-149

ヒメハダカアリCardiocondyla minutiorの特異的な繁殖戦略:有翅雄は分散飛行後近隣巣に受け入れられるのか?

*吉澤樹理(岐阜大院・応用生物),山内克典(岐阜大学名誉教授),土田浩治(岐阜大・応用生物)

多くのアリは、異系交配を行うため、繁殖時期になると雄と雌は結婚飛行するが、ハダカアリ(Cardiocondyla)属では、雌や無翅雄は巣内交尾をすることが知られている。有翅雄は母巣内に雌がいれば巣内交尾し、雌が不在か少数の場合には分散すると言われているが(山内・木野村、1993)、巣内の雌の状態と有翅雄の行動との関連は明らかにされていなかった。

これまでに、室内実験では、ヒメハダカアリ(C. minutior)の有翅雄は、母巣内に未交尾雌・羽化直前の雌の蛹がいる時には巣内に残留し、そうでない場合には未交尾雌のいる近隣巣へ分散飛行することが明らかになった。しかし、有翅雄の分散飛行後、分散先の巣へ受け入れられるかは不明であった。

そこで、本研究ではヒメハダカアリを用いて野外実験を行い二型雄(有翅雄・無翅雄)の他巣への進入の可能性について調査した。また、対照実験として無翅雄のみ存在するヒヤケハダカアリ(C. kagutsuchi)も同様の実験を行った。その結果、ヒメハダカアリの有翅雄(n=11)は近隣巣(半径5m以内)でも遠方の巣(30m以上)でも受け入れられたが、無翅雄(n=10)は近隣巣には多くの個体が受け入れられたのに対し(7/10)、遠方の巣では全ての個体が噛み殺された。また、ヒヤケハダカアリの無翅雄(n=14)は近隣巣では多くの個体が受け入れられたが(13/14)、遠方の巣では全ての個体が殺された。

これらの結果から、ヒメハダカアリの有翅雄では母巣からの距離に関係無く他巣へ受け入れられ他巣の雌と交尾できる可能性が考えられた。しかし、無翅雄では母巣から近い距離内のみ進入が可能であると考えられた。

日本生態学会