| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-154

農地依存型ニホンザルの生息地利用と行動特性

*芝原知(新潟大・院),望月翔太(新潟大・農),村上拓彦(新潟大・農),三浦慎悟(早稲田大・人)

ニホンザルの農作物被害対策を実施する際には、加害群の生態や被害形態、周辺の環境特性等を把握し、それらを考慮した上で対策を考案することが重要である。本研究では、被害発生地域において加害群の行動特性を明らかにすることを目的とした。

調査地は新潟県新発田市である。当地域では昭和58年ごろからニホンザルによる農作物被害が発生し、周囲には約13群、500頭ほどの野生ニホンザルが生息していると推定されている。このうち最も個体数が多く農地依存が高いと考えられる一群について、ラジオテレメトリー調査を行い群れの行動圏を把握した。また、群れが観察できた場合には直接観察も行った。調査期間は2006年6〜11月ならびに2007年6〜11月である。

2006年の調査より、ニホンザルの生息地利用には季節変化があり、森林資源が乏しいと考えられる夏季と冬季に農地への依存が高まることが分かった。特に、生息地間を結ぶ帯状の林がコリドーとしての役割を果たし、群れにとって重要性が高いことが示唆された。今回は2年間のデータの比較を行うことにより、さらに詳しい群れの生息地利用特性の把握とその変化要因についての検討を行った。

調査の結果、2006年は352点、2007年は213点の観察地点を得た。得られた観察地点の空間分布より、2007年は前年に比べ行動圏が縮小し、利用される地域が限られることが明らかになった。また、これに伴い移動距離も小さくなった。農地への出現率、観察された行動にも昨年とは違った傾向が見られた。これにより、群れの農地依存が高まった可能性と、群れの分裂が行動圏の変化に影響を与えていることが推察された。

日本生態学会