| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-171

農地依存型ニホンザルの生息地利用と周辺環境評価

*望月翔太(新大・農)

近年、野生ニホンザル(以下サル)による農作物被害が増加している。新潟県新発田市でもサルによる被害が多発しており、被害の減少と適切な保護管理を行う必要がある。新発田市では13の群れが確認されており、そのうちの大槻群については、行動・生息地利用には季節変化があること、生息地をつなぐ樹林帯がコリドーとしての役割を果たし、サルが農地に進出する拠点となっていることが分かっている。そこで本研究では、大槻群を対象にコリドーへの依存性を明らかにし、なぜ大槻群がコリドーを利用するのか周辺環境との違いから評価した。

調査は2007年6月から11月にかけておこなった。ラジオテレメトリ法と直接観察法を用いて、1時間ごとにサルの群れの位置を地図上に落とした。また植生調査・区画調査から、周辺の植生状況、農地の立地状況を調査した。これらのデータをGISを用いて解析を行った。

Ivlevの選択係数ならびにカーネル密度を用いた結果、大槻群は多様なタイプの環境の中からコリドーに選好を示していることがわかった。また、大槻群のコリドーへの選択理由を明らかにするため、コリドーと周辺の森林の植生の違い、コリドー周辺の農地の立地条件という点から解析を行った。すると、植生条件ではコリドーと周辺の森林で違いが見られなかったが、農地と林縁の接する割合や林縁から農地までの距離といった農地の立地条件が被害の有無と深く関わっていることが示された。つまり、コリドーから近い距離に農地が立地し、かつ接する割合が多いため大槻群がコリドーを選択すると考えられる。

日本生態学会