| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-189

セミの鳴く時間帯と鳴き音の周波数の関係

遠藤 暢(京大院・農・森林生態)

セミは種によって鳴き音が異なっていることが知られているが、周波数成分でどのように異なっているかは、国内の種に関しては一部を除き、明らかになっていない。9種に関して、鳴き音のピーク周波数や-3dB, -20dBバンド幅を抽出し、種による鳴き音の違いを定量化して、ピーク周波数に有意差がない種どうしは同時に鳴かない、即ちピーク周波数において種間でなんらかの干渉が生じている可能性があることを、昨年報告した。同所的に生息する複数種のセミ群集において、鳴く時間帯を考慮に入れ、音響的な関係を明らかにする事は、音空間・音資源をめぐって共存・競争をしているセミ群集の相互関係を解明する上で、重要である。そこで、今年は京都府内に生息するセミ10種(ハルゼミ、エゾハルゼミ、ヒグラシ、ニイニイゼミ、アブラゼミ、クマゼミ、エゾゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクホウシ、チッチゼミ)を対象として、季節性及び時間帯を調査し、種ごとの鳴く時間帯を定量的に評価し、その重なりの程度を調べた。更に、ピーク周波数など、鳴き音を定量的に比較し、周波数の似ている種どうしが同時に鳴くかどうかを詳細に調べた。その結果、10種のセミは、鳴き音のピーク周波数が異なる5グループに分かれ、その組み合わせのうち、7組のピーク周波数の似ている種どうしは、同時にほとんど鳴かなかったが、1組だけ同時に鳴くことが多かった組み合わせ(ミンミンゼミとエゾゼミ)が存在した。この結果から、同時に鳴く場合でピーク周波数が有意に異ならない場合でも、鳴き音の干渉が生じていない可能性が示唆される。発表では、ピーク周波数以外の鳴き音の構造的な分析を行う予定である。

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