| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-219

奈良市矢田丘陵の大学キャンパスにおけるカスミサンショウウオの生態と保全

*寺岡 亜里・玉井 優子・坂本 俊一・藤田 理恵子・櫻谷 保之(近畿大・農・環境生態)

奈良市矢田丘陵に位置する近畿大学奈良キャンパスには、奈良県のレッドリストで絶滅寸前種に選定されているカスミサンショウウオが生息している。本研究ではその保全を目的として生態および生息環境の調査を行った。調査は生息池・非生息池と放飼池で水温・気温・湿度を測定し、水質に関してはpH・溶存酸素量・NO3-・NO2-・NH4+・PO43-・CODを測定した。また、越冬場所の温・湿度も測定した。さらに水温16℃で幼生を飼育し、生存率と成長率を調べた。生息池の方が春から夏の間は水温が低かった。気温は調査池間で殆ど差がなかった。湿度は年間を通じて生息池の方が高かった。水質は生息池ではpHはほぼ中性を示したが、非生息池ではアルカリ性を示す時期もあった。溶存酸素量は生息池・非生息池共に7〜10mg/l付近がピークで差は認められなかったが、特にNH4+は生息地のほうが低い値であった。越冬場所の気温・湿度は、外気温・湿度よりも高い傾向を示した。なお、越夏個体は発見できなかった。飼育による8ヶ月間の幼生〜幼体の生存率は3%で、生存率は低かった。以上のように水質は生息池の方が中性で、NH4+の値も低く、本種の生息に好適と考えられた。越冬場所としては、多湿の場所を選択していると考えられた。今後はこうした環境条件を配慮して、保全対策とる必要があると考えられた。

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