| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-228

西日本におけるタケ類天狗巣病による竹林衰退の現状

橋本佳延(兵庫県博),服部 保(兵庫県立大・自然研)

兵庫県三田市でのタケ類天狗巣病による竹林の枯損状況調査(橋本ほか2006)によれば,モウソウチク林では本病はほとんど発症しないが,マダケ林では発症率95%で群落面積の50%以上を枯死稈が占める(以下,重度枯損)林分も多いという.この現象が全国的に進行すれば,現在問題とされている竹林拡大が抑制される可能性があるものの,過度ならば竹林の縮小・消失を招き日本古来の里山景観の崩壊という問題が発生しかねない.

兵庫県以西の17県および関東・東北地方の3県において,本病によるモウソウチク林およびマダケ林の枯損状況を調査した結果,マダケ林については本病発症率がいずれの県でも75%以上で,重度枯損林分が11県で確認されたのに対し,モウソウチク林については発症率10%未満の県が17県(うち7県が0%)であり,発症率が50%を越えたのは1県のみ,重度枯損林分も1県のみで少数確認されただけであった.これらのことから,本病は,(1)国内各地でマダケ林を壊滅的な枯損に至らしめる病気であり,国内のマダケ林に広く蔓延していること,(2)モウソウチク林を壊滅的な枯損に至らしめる病気ではあるが,発症率の高い地域は限定的で,広域的には発症がまれであること,が明らかとなった.

本病による竹林の枯損の程度と林床における2.5×2.5m2あたりの平均出現種数との関係について調査したところ,健全林分では8.5種,健全稈・発症稈混生林分で9.3種,発症稈・枯死稈混生林分(再生稈なし)で20.4種,発症稈・枯死稈混生林分(再生稈あり)であった.このことから,本病による竹林の枯損によって,林冠を構成する稈の発症・枯死が進むことで林内の光環境が改善されて一時的に種多様性が回復するものの,その後はササ状の再生稈が低木層に優占して再び種多様性は低下することが明らかとなった.

日本生態学会